追わないから逃げないで | ナノ



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「くそっ……」

気に食わない、気に食わない、気に食わない。

胸の中で渦巻く気持ちに気持ち悪さを感じて、息を吐き出す。

村一つ分を滅ぼしたい、

ああ、気に食わない。

煌帝を出て、やってきた砂漠の中にある村を見つめた。

「ジュダル、こんな所で何をやっている」

聞こえた声にジュダルはゆっくりと微笑むと、後ろを振り返った。

そこには顔を歪めて立っている、面白く見込みのある王、シンドバット。

「よう、バカ殿」

シンドバットはゆっくりとジュダルを見つめると、小さく口を開いた。

「……何をしにきた?」

村を眺めるジュダルを不信に思ったシンドバットは警戒していた。

「別に」

いつもは怪しく微笑むジュダルだったが、ジュダルの顔は強ばっていた。

それにシンドバットは眉間にしわをよせた。

「様子が変だな、嫌なことでもあったのか?」

「関係ねぇだろ」

やはりおかしい、とシンドバットは感じていた。

いつも以上にピリピリする空気に思わず身構えるが、ここで大きな戦いはできない。

「なぁ、女ってのはいつもビクビクしてるもんなのか?」

予想外のジュダルの言葉にシンドバットは唖然をした。

だがジュダルの顔つきは変わらない、笑うことさえない表情。

「…なんだ?お前、気になる女でもいるのか?」

「気になる…?」

ジュダルは顔をしかめると、瞳を閉じた。

「まぁ、いいや…殺さないように気をつけるだけだし」

「お前、それはどうゆうこと…」

シンドバットの言葉が終える前にジュダルはゆっくりと微笑むと、

姿を消していた。

ジュダルの姿があった所をシンドバットは見つめると、

ため息をこぼす。

「ジュダルの、お気に入り……」






   

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