追わないから逃げないで | ナノ



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「なぁ、なにやってんの?」

瞳を開くと、ジュダルの声が聞こえた、

そして声の先にはジュダルがいた、扉が半分空いている、ジュダルはそれを静かに閉めると

にこやかな笑みを浮かべた。途端にNO NAMEの鼓動は早くなる。

女官の顔は強ばるどころかジュダルに向かって微笑みを向けると、

NO NAMEを指さして、小さく口を動かした。

「神官様、この子が変なことを言い出して…」

いつの間にかテーブルに戻されていたフォークにNO NAMEは小さく声を出した。

ジュダルはゆっくりと女官に近づく、女官の表情がますます明るくなると

ジュダルにすがりつくように抱きついた。自らの身体を押し付けるような行為に

NO NAMEは瞳を細めた、がジュダルは女官に微笑む。

NO NAMEは知っていた、この笑顔を。自分に向けられたことのある笑顔を。

血が騒ぎ出す、身体が震え出す。

「だから、お前に聞いてんの。」

自分に向けられた言葉に理解できなような顔をした女官だったが、まだ顔は緩んでいる。

「俺の部屋に勝手に入るな」

女官の瞳が見開いたと同時に、蹴り上げられた女官は床に転げ落ちる。

ジュダルは微笑みを浮かべてはいなかった、ただ冷酷な冷たい瞳で女官を見下ろす。

女官は小さく唸りをあげて、顔をあげると、まだ理解できていないような顔をする。

「神官様、なぜ?…あの時は、私をっ」

とぎれとぎれに放たれる言葉には熱がこめられていく、

瞳に涙をためた女官をただ変わらぬ表情でジュダルは見下ろしていた。

「私を、もうお抱きになってくださらないんですか?!」

「お前、面白くねぇし、飽きた」

ジュダルの言葉にNO NAMEも瞳を細めた。

薄い笑みを浮かべたジュダルは部屋の扉を指さして、首を傾けた。

「出て行けよ、」

「だ、って…あんなに私を求めてくれたのに、そんな」

女官の瞳から涙がポロポロ落ち出したが、ジュダルは薄い笑みを浮かべているだけだった

「その子がいいんですか?!私より…?!」

「おい」

ぴしゃりと部屋に響いた言葉はさっきよりも低く、冷酷だった。

「こいつは苦しめるために俺と共に置いてるだけだ、お前はただの……」

そこまで言ってジュダルの言葉は止まった、それを聞くことなく女官は走り出して

部屋を出ていってしまった。

NO NAMEは瞳を閉じると、再びジュダルを見た。

ジュダルはNO NAMEに近づくと、晴れ上がった左頬を撫でる、二三回同じ行為を続けると

ジュダル右腕が振り上げられた。

「っ…」

その瞬間、左頬に今まで感じたことのない鋭い痛みを感じ、身体は反転する。

床にしりもちをついたNO NAMEをジュダルは面白くなさそうに見つめていた。

「俺以外に傷つけられるなんて面白くねえ」









   

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