一瞬の判断 3/4 「じゃあまた後で」 「………」 目の前で優雅に手を振って、 横に巻きつく、可愛らしい彼女と一緒にだんだん遠ざかっていく兄。 なんだんだ、あいつは。 ここが初めての妹を置いて、彼女とデート?! 本当に嫌になる。 きっとあの人たちにとって私の存在なんて、 そんなに重要じゃないんだ。 自分で言ってなんだか悲しくなってきたから、 気を取り直して、買い物することにした。 「…やっぱ、杖、かなぁ」 兄には、杖が一番大事。 そう言われたような気がしたので。評判の良いオリバンダーの店に向かうことにした。 見せの扉を開けると、 目の前に、オリバンダーはいた。 私をチラっと見ると、頬を上げた。 「やぁやぁいらっしゃい。」 「…こんにちわ、」 「ホグワーツの新入生かな?」 「はい、杖がほしいんです。」 それに笑って店の奥に行くオリバンダー、 愛想の良い人だなぁ。 まぁみんなにこんな感じなんだろうけどねぇ。 「これはどうかな?」 差し出されたのはいたって普通の杖。 振ってみて。 と言われたので、そのまま振ってみると、 「……何も起こらない…?」 おいおい、どうゆうこっちゃ。 「…うーん…そうかそうか。」 え、なになに。 私もしかして反発されるどころか、反応さえしてもらえない?! オリバンダーはいくつか杖を持ってきてくれた。 三本の中から好きなものを選べ、 そう言ったので、とりあえず好きなものを選んでみた。 …いい匂い。 なんだか金木犀の香りがした杖を自然に手に取っていた。 「振ってみてごらん」 緊張しながらも杖を軽く降ると、 ぽと、そう音を立てて、何かが落ちてきた。 「…?」 「これは、」 落ちててきたものをオリバンダーは拾って、 私に見せた。 「金木犀…」 「そう、金木犀…実はいうとね、時折どの杖にも気に入られない子がいるんだよ」 「…は、はぁ」 気に入られてなかったんだ…、 少し悲しい気持ちになりつつ。 話を聞いた。 「この杖、金木犀の花を混ぜて作ってあるんだけどね、中々扱いが難しいらしい。」 「私にはあっていないんでしょうか」 「いいや、私にもこのような現象は初めてなんだが、正直に言うとこの杖の候補として選ばれたように思える」 …こ、候補… 「これから先、杖が君を認めれば…君は最高の魔法使いになれるだろうけど…うーん、今の状態で使えないこともないけど…もし何か起こったら」 「いえ、これにします」 自分でもびっくりするぐらい、アッサリこの杖を選んだ私。 杖が使うものを選ぶなんて面白そう、 なんだか楽しみになってきた… 「御嬢さん、変わった子だね」 「へ、へへ」 「中々こうゆう杖を選ぶ子はいない」 「そうなんですか、」 じゃあ、ずっと待ち続けてるのかな。 主人を、 「君が最高の魔法使いになれることを祈っているよ。」 それに大きくうなずいて、店を出た。 最高の魔法使いになんてならなくていいけど、 ただ、この杖の事を私は気に入った。 そう、 微かに匂ったあの香りを感じてから。 [しおりを挟む] |