如月の華 | ナノ



一瞬の判断
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「じゃあまた後で」

「………」

目の前で優雅に手を振って、

横に巻きつく、可愛らしい彼女と一緒にだんだん遠ざかっていく兄。

なんだんだ、あいつは。

ここが初めての妹を置いて、彼女とデート?!

本当に嫌になる。

きっとあの人たちにとって私の存在なんて、

そんなに重要じゃないんだ。

自分で言ってなんだか悲しくなってきたから、

気を取り直して、買い物することにした。


「…やっぱ、杖、かなぁ」


兄には、杖が一番大事。

そう言われたような気がしたので。評判の良いオリバンダーの店に向かうことにした。

見せの扉を開けると、

目の前に、オリバンダーはいた。

私をチラっと見ると、頬を上げた。

「やぁやぁいらっしゃい。」

「…こんにちわ、」

「ホグワーツの新入生かな?」

「はい、杖がほしいんです。」

それに笑って店の奥に行くオリバンダー、

愛想の良い人だなぁ。

まぁみんなにこんな感じなんだろうけどねぇ。


「これはどうかな?」

差し出されたのはいたって普通の杖。

振ってみて。

と言われたので、そのまま振ってみると、

「……何も起こらない…?」

おいおい、どうゆうこっちゃ。

「…うーん…そうかそうか。」

え、なになに。

私もしかして反発されるどころか、反応さえしてもらえない?!

オリバンダーはいくつか杖を持ってきてくれた。

三本の中から好きなものを選べ、

そう言ったので、とりあえず好きなものを選んでみた。



…いい匂い。



なんだか金木犀の香りがした杖を自然に手に取っていた。

「振ってみてごらん」

緊張しながらも杖を軽く降ると、

ぽと、そう音を立てて、何かが落ちてきた。

「…?」

「これは、」

落ちててきたものをオリバンダーは拾って、

私に見せた。

「金木犀…」

「そう、金木犀…実はいうとね、時折どの杖にも気に入られない子がいるんだよ」

「…は、はぁ」

気に入られてなかったんだ…、

少し悲しい気持ちになりつつ。

話を聞いた。


「この杖、金木犀の花を混ぜて作ってあるんだけどね、中々扱いが難しいらしい。」

「私にはあっていないんでしょうか」

「いいや、私にもこのような現象は初めてなんだが、正直に言うとこの杖の候補として選ばれたように思える」

…こ、候補…

「これから先、杖が君を認めれば…君は最高の魔法使いになれるだろうけど…うーん、今の状態で使えないこともないけど…もし何か起こったら」

「いえ、これにします」

自分でもびっくりするぐらい、アッサリこの杖を選んだ私。

杖が使うものを選ぶなんて面白そう、

なんだか楽しみになってきた…


「御嬢さん、変わった子だね」

「へ、へへ」

「中々こうゆう杖を選ぶ子はいない」

「そうなんですか、」

じゃあ、ずっと待ち続けてるのかな。

主人を、


「君が最高の魔法使いになれることを祈っているよ。」


それに大きくうなずいて、店を出た。


最高の魔法使いになんてならなくていいけど、


ただ、この杖の事を私は気に入った。













そう、


微かに匂ったあの香りを感じてから。








 

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