影には誰かがいそうで 4/5 「…頬、どうしたの?」 「わかんない、でも大丈夫だよ」 呪文学の実践中、騒がしくなった教室の中でハーマイオニーがNO NAMEに話しかける 心配かけまいと放った言葉だったがハーマイオニーは顔を曇らせた。 「本当に大丈夫だからね」 「そうゆうなら…」 やっとハーマイオニーは小さな笑みを見せると、NO NAMEもにこやかに笑った。 そしてNO NAMEは杖を捕って呪文を唱えようとしたが、一時停止してじっと杖を見つめた。 「(確かこの杖って…使いづらいとかなんとか)」 だが今までにこの杖をそう思ったことはない、NO NAMEは顔を傾けてオリバンダーの言ったことを思い出した。 「(最高の魔法使いになんかならなくていいや)」 心の中で小さく笑うと、杖から時々香る金木犀の香りを思い出す。 妙に切なくて、甘い香り、何かを忘れているようで、知っているようで、 なんだか不思議な、金木犀の香り。 「その杖、中々良い素材ですね」 「!」 突然横から聞こえた声に驚きながら、視線を向けると、そこには闇の魔術に対する防衛術の先生であるクィレルが立っていた。 NO NAMEは一瞬動きを止めたが、すぐに口を開いた。 「普通の、杖ですよ?」 この杖に金木犀の花が混ぜられていることは教えるつもりはなかった、もちろん使いづらいと言ったオリバンダーの話も、クィレルはターバンを巻いた頭を傾げる。 「本当にか?」 その声は普段のクィレルからは想像もできないような低い声だったような気がして NO NAMEの背筋が凍りつく。 「…本当です、どうして呪文学に?」 「見学ですよ、一年生の皆さんの魔法を見てみたくて」 うっすらと笑ったクィレルにNO NAMEはそうですか、と返すと一礼して 近くにいるハーマイオニーの元へ歩いていく。 未だに視線がこちらにむいているような気がして、寒気がするような気持ちになるNO NAME。 クィレルはうっすらを笑みを浮かべたままだった。 [しおりを挟む] |