鳥の声と怪物の声 2/4 「ほら、早く起きろよ。」 「………うえぇっ…」 「汚い、やめてください、ほんとにお願いします。」 鳥の声が聞こえた。 綺麗な鳴き声と忌々しい兄の声で目が覚める。 まだこのフカフカな暖かい布団の中で私は眠っていたい。 そう思ったが、よく考えてみると今日は出かける日だ。 顔をしかめて布団から出てぐちゃぐちゃの髪のまま、リビングに下りる。 普通ならここに母親がいて、朝食の準備をしているはずだが。 私の家庭ではそんなものが普通ではない。 私たち兄弟は両親がいない。 この生活があるのは親戚の家から助けてもらっているから。 「あれ、早くない?」 さっきおこしに来た兄の他にもう一人、 長男の兄がいる。 「だって今日は……なんでもない。」 「なんだよ、反抗期か、クソ、まだお前には早い」 何かを言えば、憎たらしい言葉を返してくる兄たちが私は好きじゃない。 だからあんまり話さないし、 テーブルに用意されているパンをかじりながら、 ぼーっとしていると、 次男の兄が私を急かした。 「早くしろって、もう間に合わねーって!!」 暖炉の前でイライラする兄に、 ため息をついて、着替えを始める。 「あ、そっか…今日はダイアゴン横丁に行くんだったな。」 「うん、」 一か月前、私の家に届いた一通の手紙。 その手紙を見た私は、なんだか変な気持になった。 兄達は、良かった!お前も魔法使いだ!そう言って喜んでいたが、私は魔法使いにそんなに関心はなかった。 今日は教科書やら、服やら色々そろえるために、 次男に付き合ってもらう約束だ。 「ほら、行くぞ」 「これ…なんだか…、」 「大丈夫だって、発音さえしっかりすれば」 小さいことからこの暖炉で青い炎に身を包んで、消えていく兄達を見ていたが、 やはり初めて。 勇気がいる…。 だって、だって…火だよ? 熱いって。熱い、うん。 「はーやーくー!」 「もう、わかった」 ここでくじくじしててもしょうがない。 しかめっ面で口を開く。 手には、フルーパウダー。 「ダイアゴン横丁!!!!」 [しおりを挟む] |