如月の華 | ナノ



鳥の声と怪物の声
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「ほら、早く起きろよ。」

「………うえぇっ…」

「汚い、やめてください、ほんとにお願いします。」

鳥の声が聞こえた。

綺麗な鳴き声と忌々しい兄の声で目が覚める。

まだこのフカフカな暖かい布団の中で私は眠っていたい。

そう思ったが、よく考えてみると今日は出かける日だ。

顔をしかめて布団から出てぐちゃぐちゃの髪のまま、リビングに下りる。

普通ならここに母親がいて、朝食の準備をしているはずだが。

私の家庭ではそんなものが普通ではない。

私たち兄弟は両親がいない。

この生活があるのは親戚の家から助けてもらっているから。

「あれ、早くない?」

さっきおこしに来た兄の他にもう一人、

長男の兄がいる。

「だって今日は……なんでもない。」

「なんだよ、反抗期か、クソ、まだお前には早い」

何かを言えば、憎たらしい言葉を返してくる兄たちが私は好きじゃない。

だからあんまり話さないし、

テーブルに用意されているパンをかじりながら、

ぼーっとしていると、

次男の兄が私を急かした。


「早くしろって、もう間に合わねーって!!」


暖炉の前でイライラする兄に、

ため息をついて、着替えを始める。

「あ、そっか…今日はダイアゴン横丁に行くんだったな。」

「うん、」

一か月前、私の家に届いた一通の手紙。

その手紙を見た私は、なんだか変な気持になった。

兄達は、良かった!お前も魔法使いだ!そう言って喜んでいたが、私は魔法使いにそんなに関心はなかった。

今日は教科書やら、服やら色々そろえるために、

次男に付き合ってもらう約束だ。

「ほら、行くぞ」

「これ…なんだか…、」

「大丈夫だって、発音さえしっかりすれば」

小さいことからこの暖炉で青い炎に身を包んで、消えていく兄達を見ていたが、

やはり初めて。

勇気がいる…。

だって、だって…火だよ?


熱いって。熱い、うん。

「はーやーくー!」

「もう、わかった」

ここでくじくじしててもしょうがない。

しかめっ面で口を開く。

手には、フルーパウダー。












「ダイアゴン横丁!!!!」




 

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