如月の華 | ナノ



思い出を語ろう
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「よし、じゃあ行くぞ」

家に帰ってきてから三日後、私たち兄妹は再び家を出た。

向かったのは少し遠くにある墓地だった。

兄たちは毎年クリスマス休暇には必ず返ってきた。

そして今年は私も一緒にホグワーツから帰還して、一緒に墓地に行くのだ。

理由は両親のお墓参り。

クリスマスに近い日、両親は死んだのだ。

墓地は毎年きてもしんみりとしている。


「NO NAME、ちゃんと今年あったこと言うんだぞ」

「わかってるよ」

お母さん、お父さん。

顔も知らない両親。

本当はわからないんだ、両親のありがたみとか、温かさとか。

だけど両親を求めようとはしなかった。

覚えていないけど、知らないけれど、

「今年のクディッチ優勝できるかな」

「今年はグリフィンドールだよ」

ふと兄が出した話題に私はすかさず答えると、嫌な目線が返ってきた。

「そうだ、父さん、母さん、なんでこいつグリフィンドールなんだ?」

お墓に呼びかけるように言った兄に自分も苦笑した。

「父さんも母さんもハッフルパフって言ったてような気がするけど」

「そうなんだ、なんでだろうね」

まぁそれに関してのことは解決してないけれど、

気にしていない。

グリフィンドールがとても穏やかで優しい人ばかりだから、全然いい。

なにより兄たちと離れたのが嬉しい。

勝ち誇ったような気分だ。

でも墓を見つめるランの瞳を、見て、少し瞳を細める。

ランディーは毎年同じような顔をする。

切なそうな表情を浮かべて、何かを考えるような顔、

声をかけることはできないような空気を纏わせていて、

いつも墓地に最後まで残っている。

「そろそろ行こう」

「うん、」

ルーズも分かったように私の手をひく、それに反抗することなくついていくが

最後までランの背中を見つめていた。

墓地の入口でランを待っていると、息を吐いたルーズの視線がこちらへと向く。

それになんだという顔をすれば、ルーズの口が開いた。

「兄貴のこと気になるか?」

「うん、まぁ…聞けないけど」

「そうだろうな、俺ですら聞けない」

驚いた、私よりランといる時間が多いルーズですらその理由を知らないなんて、

瞳を見開いていると、ルーズの不愉快そうな顔が帰ってくる。

「兄貴は、俺より両親との思い出が、強かっただろうから」

「……そうだね」

両親の死、今まで自分から聞いたことはなかった。

私が生まれたばかりの頃、二人は事故で死んだと言われた。

家にある二人の写真、まだ若く、笑顔の写真ばかり。

でも私には、不思議な感覚がするのだ。

「待たせたな」

「いや、帰ろうか」

顔をひょっこりとだしたランは微笑むと、私の身体を持ち上げた。

「な、なに?!」

「たまには優しい兄貴らしいことをしようと思って」

「やめてよ!!なにこれ?!嫌がらせ?!」

私の今いる位置はランの肩の上、いわゆる肩車という奴です。

無邪気な子供ならこれを喜ぶのだが、私は高いところが苦手でどうも喜べそうにない。

「やめてよ!」

「いやだね、走るぞ!」

「いぎゃあ!!!」

「おい、待てよ!」

走り出す二人の青年と一人の少女の姿、それを見つめていたのは、

黒い、影。





 

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