思い出を語ろう 3/4 「よし、じゃあ行くぞ」 家に帰ってきてから三日後、私たち兄妹は再び家を出た。 向かったのは少し遠くにある墓地だった。 兄たちは毎年クリスマス休暇には必ず返ってきた。 そして今年は私も一緒にホグワーツから帰還して、一緒に墓地に行くのだ。 理由は両親のお墓参り。 クリスマスに近い日、両親は死んだのだ。 墓地は毎年きてもしんみりとしている。 「NO NAME、ちゃんと今年あったこと言うんだぞ」 「わかってるよ」 お母さん、お父さん。 顔も知らない両親。 本当はわからないんだ、両親のありがたみとか、温かさとか。 だけど両親を求めようとはしなかった。 覚えていないけど、知らないけれど、 「今年のクディッチ優勝できるかな」 「今年はグリフィンドールだよ」 ふと兄が出した話題に私はすかさず答えると、嫌な目線が返ってきた。 「そうだ、父さん、母さん、なんでこいつグリフィンドールなんだ?」 お墓に呼びかけるように言った兄に自分も苦笑した。 「父さんも母さんもハッフルパフって言ったてような気がするけど」 「そうなんだ、なんでだろうね」 まぁそれに関してのことは解決してないけれど、 気にしていない。 グリフィンドールがとても穏やかで優しい人ばかりだから、全然いい。 なにより兄たちと離れたのが嬉しい。 勝ち誇ったような気分だ。 でも墓を見つめるランの瞳を、見て、少し瞳を細める。 ランディーは毎年同じような顔をする。 切なそうな表情を浮かべて、何かを考えるような顔、 声をかけることはできないような空気を纏わせていて、 いつも墓地に最後まで残っている。 「そろそろ行こう」 「うん、」 ルーズも分かったように私の手をひく、それに反抗することなくついていくが 最後までランの背中を見つめていた。 墓地の入口でランを待っていると、息を吐いたルーズの視線がこちらへと向く。 それになんだという顔をすれば、ルーズの口が開いた。 「兄貴のこと気になるか?」 「うん、まぁ…聞けないけど」 「そうだろうな、俺ですら聞けない」 驚いた、私よりランといる時間が多いルーズですらその理由を知らないなんて、 瞳を見開いていると、ルーズの不愉快そうな顔が帰ってくる。 「兄貴は、俺より両親との思い出が、強かっただろうから」 「……そうだね」 両親の死、今まで自分から聞いたことはなかった。 私が生まれたばかりの頃、二人は事故で死んだと言われた。 家にある二人の写真、まだ若く、笑顔の写真ばかり。 でも私には、不思議な感覚がするのだ。 「待たせたな」 「いや、帰ろうか」 顔をひょっこりとだしたランは微笑むと、私の身体を持ち上げた。 「な、なに?!」 「たまには優しい兄貴らしいことをしようと思って」 「やめてよ!!なにこれ?!嫌がらせ?!」 私の今いる位置はランの肩の上、いわゆる肩車という奴です。 無邪気な子供ならこれを喜ぶのだが、私は高いところが苦手でどうも喜べそうにない。 「やめてよ!」 「いやだね、走るぞ!」 「いぎゃあ!!!」 「おい、待てよ!」 走り出す二人の青年と一人の少女の姿、それを見つめていたのは、 黒い、影。 [しおりを挟む] |