如月の華 | ナノ



真意を覆う血
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「…あれ、それは?」

今日はハロウィンで美味しいご馳走を食べているルーズの懐には

小さな袋があった。可愛らしいラッピングで、なかにはお菓子が入っているようだった。

「ひょっとして誰かに悪戯でもしたの?」

「そんなことするわけないだろ」

「ああ、彼女に貰ったのか」

いつもなら笑ってルーズは頷くはずだったが、今回は頷かなかった。

違うのか、と思っていたら前の席に座っていたランディーが声を発した。

「まだあげてないのか?今日のうちに渡さないと意味ないぞ」

「なんで俺なの?兄貴が渡せよ」

「お前が一番あいつをいじめてるから」

話の内容から、このお菓子はNO NAMEにあげるのか、と想像する。

でも、なぜ?

今日はハロウィンなのに。

僕の疑問に気づいたのかランディが笑った。

「いやね、ハロウィンには毎年あいつに悪戯してるんだけど、だいぶ頭にきてるらしいから、お菓子でもプレゼントしてやろうかと」

「ただの機嫌取りだよ、NO NAMEは怒ると面倒なんだ」

「そうなんだ…」

それはルーズ達の扱いがひどいからだと思うが、プレゼントはいいことだ。

きっとNO NAMEも機嫌を直してくれる。

「なら早く渡せばいいじゃないか?グリフィンドールの席にいるはず…」

と思ってグリフィンドールの方を眺めてみたがNO NAMEの姿は見当たらなかった。

「あれ、いないな」

「え?なんで」

そうルーズが身を乗り出そうとした時、クィレル先生の高い叫び声が響いた。

「トロールがあぁっ!!!ホグワーツに侵入しました!!!」

その声を聞くと、生徒は騒ぎ出す。

「トロールだって…?」

「まぁ先生達がなんとかするさ、ってどこに行くんだいルーズ!!」

急に走り出そうとしたルーズを掴む。

「NO NAMEが危ないっ」

確かにここにNO NAMEがいないのならば、危ない。

でもNO NAMEがどこにいるか分からないまま走り回るのならルーズが危ない。

僕の手を振り払おうとしたルーズを押さえつけたのはランディだった。

「まぁ落ち着け、ひとまず寮に戻るんだ。」

それにぐっとしたようなルーズは小さく頷いた。

ランディはそれを確認するとハッフルパフの生徒を誘導し始めた。

寮に戻ると、ルーズにランディが話しかけた。

「俺がNO NAMEを探すから、お前はここにいろよ」

「はぁ?!俺も行くよ」

「僕も行くよ」

自分もNO NAMEを探すのを手伝うと言うと、ランディが微笑んだ。

「ここから監督生以外は外に出ることはできない、わかってるだろ?

大丈夫、必ず見つけるから」

そう言って寮を出ていったランディを見つめていたルーズは

はぁ、とため息をついて瞳を細めた。

「まったくお騒がせな奴だな…」

「そうゆうわりにはすごく心配していたじゃないか?」

それにバツの悪そうな顔をして、小さく顔を歪めたルーズ。

「俺はあいつのこと嫌いなんだ」

とても嫌っているようには見えないが、

それに微笑みを浮かべると、ルーズの視線が下に向いた。

でも真の強い瞳を向けて、小さく呟く、



「それでも…俺のたった一人の妹なんだ。」



その言葉が何を表すのか、まだ僕にはわからなかったけれど。

きっと大事なことなんだろう、とは分かっていた。






 

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