壊したくて泣きたくて | ナノ
16011/3
毎朝、決まった時間に目を覚ます。台所へ向かって朝食を作れば、二人分作ってしまう時がある。こんなことは何回もあって、逆に自分を苦しめて、それでも忘れることだけは・・・したくなかった。それまでたくさんの苦難とか、苦しいこと、みんなに心配かけたこと、あったけれど・・・。それだけはしたくない。彼をまだ、思い描いていたい。
「・・・どんなに、辛くても」
どんなに涙が溢れ出しそうで、泣き喚きたくても。彼を想うと、誓ったんだ。それでもくだらない夢にとらわれるときがある。彼とはすぐには会えないと思っているのに、朝目を開けたら、隣に彼がいたり・・・なんて想像をよくしてしまう。太陽の光を浴びて輝く金髪に触れて、彼の笑顔を、見たい。
――くだらない、夢だって・・・いい
重たい、瞼をゆっくりと開くと、ぼんやりと見えたのは金髪だった。あれ・・・彼の金髪に似てる。目の前でぼやけてうつるクラウドの姿に、微笑んだ。いい夢もみるものだな・・・すごく嬉しい。彼に手を伸ばせば、夢なのに確かな感覚を感じた。その頬に手をあてれば、笑顔になれる。早く、会いたい・・・それだけ。それだけで胸がいっぱいになって、
「夢じゃなかったら・・・いいのに、」
囁いた言葉の次に聞こえた彼の声、ひどくはっきり聞こえて、不思議だった。
「おい、大丈夫か・・・あんた」
あれ、違う。手を引っ込めれば、はっきりしてきた視界に目を見開く。これは夢なの?なんてリアルな夢だろう、彼の声も感覚もはっきりと感じる。
「・・・えと、夢にしては・・・」
「夢・・・、」
疑問そうに、不可解そうにクラウドは顔を傾けると、心底私を変な目で見るような表情をした。あれ、なんで・・・、はっと感づけば、彼に抱き起こされていることに気づく。なんで・・・、本当に夢?夢でなかったら・・・と考えてしまって、すごく自分が嫌になるけれど。目の前にはっきり見える彼は・・・、
「夢じゃない・・・」
目もちゃんと覚めてる。ちゃんと・・・起きてる。目の前にいるのは、クラウドだ。そう理解すると同時に胸の中で秘めていた感情が心に溶け出した。瞳から溢れ出す涙が、ぼたぼたと溢れ出す。
ああ、やっと・・・貴方に会えた
「クラウドっ」
名前を呼べば、幸せな気持ちでいっぱいなった。笑顔が、溢れて止まらない。だが目の前の彼は顔を歪ませると、少し瞳を細めた。心臓の鼓動が早まる、嫌な・・・予感がした
「あんたは・・・誰だ」
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