壊したくて泣きたくて | ナノ
15011/1
「クラウド、どうしたの・・・?」
教会の中で花の中を眺めていたら、一緒に来ていたマリンの声が聞こえた。小さく笑ってみせたが、マリンの表情は変わらず、小さな手で俺の手を握り締める。
「最近ずっとそんな顔してる・・・」
「・・・、」
自分でも不可解だと思うことがいくつかある、この、ピアスが無くなった時から自分の中で何かが変わってしまった。重かったものがないのに、どこか苦しい。わけもなく、泣きたくなる時がある。そんなときに脳内によぎった誰かの笑顔がある。でもその顔は見えなくて、誰だかもわからなくて、とにかくわからないんだ。自分でも。
「そろそろ帰ろう」
「うん!」
マリンがフィンリルの方へ走り出すと、その背中を見つめながらゆっくりと歩く。その時、空から声が聞こえたような気がした。かつて俺が開けたこの天井の穴を見上げると、青空から黒い人の姿が落ちてくるのが見えた。
「人?!」
自分の頭上から落ちてくるその姿を呆然と見つめていたら、その瞬間大きな音と共に、全身に何かが落ちてきたような衝撃を感じた。
「・・・っ、」
自分の上で響いた少し高い声に、顔を歪ませながらも瞳を開くと、やはり落ちてきたのは人間だった。
「おい、大丈夫か・・・あんた」
なんで、こんなところから落ちてくるんだと思いながらも、抱き起こしてみれば、瞳をゆっくりと開けた、女の姿。瞳と瞳が交差した時、なぜか・・・泣きたくなったような気がする。深いところで根付いていた感情が爆発するような、そんな気がして。ただ瞳を開いて見開く、彼女の姿を眺めていた。
落ちてきたのは、感情だっただろうか
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