壊したくて泣きたくて | ナノ

0901
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「へぇNO NAMEの彼氏ねぇ!物好きだな、クラウド君」

「うっさいよ!失礼!!」

昼ご飯を作りながらクラウドと兄との会話を緊張しながらも聞いていた。

今日だけ彼氏のクラウドはちゃんと質問に受け答えて、全然怪しまれていない様子だった。

「俺は廉、呼び捨てでいいよあとタメで大丈夫だからクラウド君」

「俺も、呼び捨てで」

兄はそれに笑顔で頷くと、運ばれてきた料理に微笑みを見せた。

「久しぶりのNO NAMEの料理だなあ」

「ありがたく食べてよね、まぁ奥さんの料理には劣るけどね」

「どっちも美味しいよ」

兄はもう既婚者で、可愛い奥さんがいる。優しい人だった。

よく兄はこっちに様子を見に来てくれるし、奥さんと一緒にお泊まりにも来てくれる。

もし、兄に子供ができたら会う機会は減ってしまうけれど、兄の幸せを優先したい。

「まぁ俺はいないものとして扱ってくれていいから、二人でゆっくりしてよ」

「……はぁ、クラウド…散歩いこうよ」

お兄ちゃん、いくら私たちが本当に付き合ってないとしてもそれは無理があるよ。

クラウドは無言で頷くと、共に家を出る、

「ちょ、クラウド」

玄関を出たクラウドの姿をまじまじと見つめながら、息を零す。

「なんだ」

こっちの人間ではないのに、見事に服装を着こなしているクラウドに驚きを隠せない

まだ少ししかたってないのに、こちらのファッションを理解している。

「…クラウドって、オシャレだねぇ…」

「服の着方のことか…?まぁ俺の世界と対して変わらないからな」

前にも聞いたような気がするが、まぁいい。

二人で並んでとはいかないが、私が前でその少し後ろをクラウドが歩く。

「どっか行きたい?」

「別に、」

少しそっけない態度に、ちくんと胸が傷んだ。

しょうがないよ、傷つくな、お願い。

必死に抑えようとするのに、なんだか涙が出そうになる。

「あのさ、エアリスって彼女…?」

自然と口からこぼれ落ちた言葉に、自分自身も戸惑いを隠しきれない。

なんで、なんで今その話し?疑問と切なさと、悲しみが渦巻いてNO NAMEを侵食する。

クラウドからの答えは帰ってこない、振り向けば、立ち止まっているクラウド

近づいて顔を見上げれば、どこか遠くを見るように視線を下げていた。

「…クラウド?」

胸が痛い、どうしてそんな顔するのだろう、どうして苦しそうな顔をするんだろう

エアリスという名前よりも、クラウドの表情に悲しくなる。



――どうして、うまくいかないんだろう



「ごめんね…寝言で言ってるの…聞いたの」

ゆっくりとそう言って、また前に進もうとした時、腕を掴んだ大きな手。

間違いなくクラウドのもので、進もうとしていた足を立ち止せれば、小さく聞こえてくるクラウドの言葉を待つ。

「…エアリスは、そんな存在じゃない」

「…え」

思わず声が漏れてしまった、舞い上がる胸と高鳴る心臓、全てが交差して

瞳を見開く、

「でも……死んだんだ、」

その言葉に、高鳴る胸の鼓動が小さくなる、瞬きをすることを忘れた瞼、

うつむいた顔を上げて、どうしようもないぐらい悲しみのこもった瞳をこちらに向けて

クラウドはまた小さく囁いた。




「俺のせいなんだ」




ねぇ、どうしようもなく痛いよ


   

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