壊したくて泣きたくて | ナノ

0601
1/2



「はぁ…っ…はぁ…」

必死の思いで秋真の家まで走った、家にいるか分からないけど走った。

途中でもつれそうになる足を必死に動かして。

「っ…」

インターホンを鳴らすと、ガチャっと音を立ててドアが開く。

出てきた人物は私を見て見開いた。

「…な、にしてんの?」

「あ、のっ……」

秋真だった、彼は家にいた。

伝えなきゃ、この思いを。

でも、でも、怖い。秋真の瞳を見ることができない、

震える、全身が、胸が苦しくて、痛い。

それは、私だけじゃないよね……?

――でも逃げない。

「俺、電話で言ったけど…もうお前のこと」

「うんっ…分かってる…っ。」

涙が出てきそう、今までこんなふうに話したことなかった。

だからこそ、涙が出てくる。

私、いままでなにしてたんだろう。

「じゃあ……なに?」

「私、謝りたくて…っ…今まで本当にごめん、私のせいだから…」

秋真は一瞬驚いたが、瞳を細めて私を見た。

もう遅い、とでもいうかのような瞳だったが、今目をそらすのは絶対に嫌だった。

「ごめん、でも私、好きだったよ!ちゃんと…秋真のこと、好きだったっ…」

「そんなこと、今更言われても…っ…」

秋真は泣きそうだった、顔を歪めて、瞳に涙を溜めていた。

それに微笑むと、しっかりと伝わるように、声を出した。

「ありがとう、今まで…ありがとう」

それだけ言うと、私は秋真に背を向けて歩きだした。

これで、前に進めたよね。クラウド。

「ま…っ…待てよ、NO NAME、俺…やっぱりお前のこと、好きだっ」

NO NAMEは振り返ることはなかった。

しっかりと秋真の声は届いていたけど、前に進む為に。




   

[しおりを挟む]
  back
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -