壊したくて泣きたくて | ナノ
06011/2
「はぁ…っ…はぁ…」
必死の思いで秋真の家まで走った、家にいるか分からないけど走った。
途中でもつれそうになる足を必死に動かして。
「っ…」
インターホンを鳴らすと、ガチャっと音を立ててドアが開く。
出てきた人物は私を見て見開いた。
「…な、にしてんの?」
「あ、のっ……」
秋真だった、彼は家にいた。
伝えなきゃ、この思いを。
でも、でも、怖い。秋真の瞳を見ることができない、
震える、全身が、胸が苦しくて、痛い。
それは、私だけじゃないよね……?
――でも逃げない。
「俺、電話で言ったけど…もうお前のこと」
「うんっ…分かってる…っ。」
涙が出てきそう、今までこんなふうに話したことなかった。
だからこそ、涙が出てくる。
私、いままでなにしてたんだろう。
「じゃあ……なに?」
「私、謝りたくて…っ…今まで本当にごめん、私のせいだから…」
秋真は一瞬驚いたが、瞳を細めて私を見た。
もう遅い、とでもいうかのような瞳だったが、今目をそらすのは絶対に嫌だった。
「ごめん、でも私、好きだったよ!ちゃんと…秋真のこと、好きだったっ…」
「そんなこと、今更言われても…っ…」
秋真は泣きそうだった、顔を歪めて、瞳に涙を溜めていた。
それに微笑むと、しっかりと伝わるように、声を出した。
「ありがとう、今まで…ありがとう」
それだけ言うと、私は秋真に背を向けて歩きだした。
これで、前に進めたよね。クラウド。
「ま…っ…待てよ、NO NAME、俺…やっぱりお前のこと、好きだっ」
NO NAMEは振り返ることはなかった。
しっかりと秋真の声は届いていたけど、前に進む為に。
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