壊したくて泣きたくて | ナノ
04011/2
よく行く公園のベンチに座って、携帯を開いた。
データフォルダの中の写真には友達ばかりで、彼氏との思い出の写真もない。
秋真はよく遊びに誘ってくれたけど、私が断ってばかりだった。
「…なんでだろう、」
彼はたくさん傷ついた、わかってたはずなのに、私は、また彼を傷つける。
「なんでもっとよく考えて、答えを出さなかったんだろう」
浮かれて、流されて、曖昧なままの気持ちを放置して。
なんにもうまくいかない。
クラウドにも当たってしまった。
どうして、どうして……。
作成していたお別れメールを削除すると、息を吐き出した。
ゆっくり、すって、はいて。
「…はぁ…馬鹿だな、」
こんな所で弱音なんかはいてられない、
前に進まなきゃいけない。
逃げちゃいけない。
ベンチを立ち上がると、家に帰ろうと道を歩み出す。
足が重いけど、ここで逃げたら…もっと自分が嫌いになる。
もう戻れなくなると思うから、頑張らなきゃ。
家にたどり着いて、玄関を開こうと手を差し出そうとしたら、玄関が自動的に開く。
「っ…!」
驚いて、一歩後ろに下がると、中から金髪の頭が見えた。
「…あ、クラウド」
どうやら彼は外に出ようとしたみたいだった。
よかった、ぶつからなくて。
「どうしたの?」
「…あんたを、探しに行こうと」
クラウドの青い瞳がこちらにむいた瞬間、今すぐここから逃げたい気持ちになる。
でも、逸らしちゃいけないんだよね。
「クラウド…ごめんね、」
小さな声だったが、クラウドはふっと笑うと瞳を細めた。
「俺もすまない、出過ぎたことを言った」
「ううん、本当のことだから」
二人で家の中に上がると、私はソファに座って息を吐き出した。
良かった、ちゃんといえた。
これで少しは前に進めたから。
ううん、まだだ。
「ねぇクラウド」
クラウドは答えなかったが、隣に座ってしっかりと目線を向けてくれた。
すこし微笑むと、私をクラウドと向き治る。
自分の壁を、壊さなきゃ。
「私ね、自分で頑張ってなかったと思うの…秋真を好きになれるように努力したい」
クラウドは頬を緩めた。
心臓が、揺らぐ。こんな笑顔みたことなかったから、鼓動が早くなっていく。
「うん」
彼はそれ以上なにも言うことはなかったけど、笑顔を見せてくれた。
何かがガラガラと崩れていくような気がしたのに、
妙に嬉しい気持ちが、ある。
→
[しおりを挟む]