壊したくて泣きたくて | ナノ
03011/3
「NO NAME」
「な、なにっ?」
背後からいきなり聞こえた声にびっくりした。
それは紛れも無く同居人クラウドの声でなんだか新鮮なその声に心臓が跳ねる。
振り返ればクラウドは洗濯物のカゴを持っていた。
「洗濯物、終わった」
「あ、はい、ありがとう」
「いい」
笑顔でそう答えると彼は軽く言葉を吐いて他にやることは?
と聞いてきた。
でも別にやってほしいことはなかったので首を振ると、彼は軽く頷いた。
そしてそのままソファに座ると、テレビに視線を向ける。
クラウドはほとんど喋らないし、クラウドが笑うことも少ない。
知らないこの土地に慣れない、という理由もあったが、何かを抱え込んでいるような気がしてならない。
でもその理由は聞けなかった。
何も知らない奴にそんな事軽々しく聞かれたくなさそうだったから。
一言で言うと、クラウドには壁があるのだ。
高い、壁が。
壊そう、とも思わない。だって自分にも壁があるから。
するとふいに携帯の音がなった、すぐに携帯を開くとそこには秋真と名前が書かれていた。
メールの本文を見れば、『今メールできる?』
私はこの文字が嫌いだった。
なんで彼氏とメールしなくちゃいけないんだろう。
面倒だなあ、
こんなことを思うのはもう何度目だろうか。
なんで私はこう思ってしまうのか。
ため息をつくとメールを打ち出した。カタカタと手早い手つきで打っていくと送信ボタンを押した。
『ごめん、今忙しい』
いつもこんな返信をするわけじゃない。
でも今日はそうゆう気分じゃないんだ。しょうがない。
もう一度深いため息をつくと、クラウドのいるソファに腰を下ろした。
私のため息を聞きつけたのかクラウドはこちらをじっと見つめると、
小さく口を開いた。
「どうした?」
「…うん、ちょっとあって。ねぇ、好きな人とかと連絡を取り合うのは普通だよね?」
それに少し時間を置くと、クラウドは答えてくれた。
「まぁ一般的にはな」
「やっぱり?そうかあ」
私の好きな人は秋真じゃないってこと?
いや、確かに告白された時は嬉しかった。じゃあなんで、私は今こんな気持ちなの?
「思ったんだが」
テレビに視線を向けていたクラウドの青い目がこちらに向くと、
口は動いた。
「あんた、俺と住んでいてまずくないか」
「は?なんで」
そうゆう話はもっと前に解決したはずだったが、クラウドはため息をついた。
「あんたは男がいるだろ」
何を考えているんだ。とでもいうかのような顔をしたクラウドに、
一瞬自分を落ち着かせて考えた。あ…そうか。ダメだな、こりゃ。
「じゃあ、別れるか」
「……は?」
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