壊したくて泣きたくて | ナノ

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「・・・眠れない」

ティファさんに借してもらっている部屋のベット上で起き上がる。窓を眺めれば夜空に月が浮かんでいた。息を吐き出して、水でももらいにいこうと。部屋から出て、一回の店に降りる。蛇口をひねってグラスに水を注げば、真ん中のカウンター席に座る。息を静かに吸い込んで、薄暗い店を眺める。うっすらと月明かりが差し込む、このカウンター席で、ぼんやりと頭の中に浮かんできたクラウドのことを考えてしまった。

うっすらと流れ出てきた涙を慌てて拭って、目をこする。やめてよ、なく資格なんてないのに。彼が私を忘れてしまったことは仕方のないことなのに、なのに、肌身離さず持っていた彼のピアスが私の涙腺を崩壊させる。

「・・・嫌だな、泣くなよ、ばーか」

全部自分に向けた言葉だからこそ、なお、辛い。なんで、泣くの・・・。いい加減、泣き飽きたらどうだろうか。私はずっと、泣いてばかりだ。

ふと、物音が聞こえてきたと思うと、暗闇から姿を現した金髪の持ち主のクラウドに唖然とする。なんで、こんな時間に。彼も少し驚いたのか、数秒瞳と瞳が交差した。だが、すぐ私は頭をテーブルに伏せる。やだ、泣いてるってわかったかな?!最悪だ、

「・・・あの、ごめんなさい。水を飲みに来て・・・」

伏せたまま、話したから不審がられただろうか。彼の足音が聞こえる、それが近づくと静かな声が聞こえた。高くもない、低過ぎもしない、彼の心地よい声のトーン。いつのまにか大好きな声になっていた、彼の声が静かな部屋に響く

「・・・なんで、泣いてるんだ」

その言葉に、目を丸くすると、伏せたまま言葉を続けた。

「な、泣いてないよ・・・」

「あんた、NO NAMEっていったよな」

「う、ん」

久しぶりに名前を呼ばれたような気がした。もう本当に何年ぶりだろう、と思うくらい。実際に久しぶりだけど、ほんとにひどくそんな声が心に響いて、悲しくなってくる。もう、クラウド戻ってくれないかな、本当に号泣してしまう。ただでさえ、今は涙をこらえるのに必死なのに

「帰りたいのか、元の世界に」

元の世界。私の世界、いつかは帰らなければいけない世界に、帰りたいけれど。今はそのことで悲しいわけじゃない。確かにクラウドがいない状況だったら、そうゆうことで悲しくなっているんだと思うけど、今は、違う・・・。でも、彼にそんなこと言えるわけない

「う、ん・・・まあ」

「ここへ来れたんだったら、帰れる・・・そう、思うけどな」

隣のカウンター席に座った彼の言葉は、私を慰めているような気がして。彼に心配かけさしてしまっているのかな・・・嫌だな。本当、笑顔を、作れよ

「うん、そうだよね。ありがとう、元気、でた」

伏せていた顔をあげて、クラウドに向けてへらっと笑ったつもりだったのに、自然と瞳からこぼれ落ちた一粒の雫に、慌ててその場を立ち上がった。やだ、やだ、やだ。クラウドに背を向けて、階段を上がろうとしたが、それは掴まれた腕によって阻止される。

「おい、元気なんか出てないよな」

「出てる、嬉し涙だよ」

「不自然すぎる」

不自然って・・・仕方ないじゃん、どうしたって涙は止まってくれないんだから。こうゆう展開は貴方を想い続けると決めた私にとっては苦しすぎる。だから、早く手を離して、そう思っているのに、離して欲しくない、そんな私がいる。本当に嫌になる。
その瞬間、後ろからクラウドに引き寄せられれば、そのまま抱きしめられる。肩に埋まった彼の顔に、何が起こったかわからなくなった

「俺は・・・あんたが泣いていると、ひどく・・・苦しいんだ」

「・・・な、なんで」

「その理由が知りたいんだ、頼むから泣かないでくれ」


――頼むから、泣かないでくれ


前にクラウドに言われた言葉と重なる。それは静かに胸の中へ沈んでいくと、私は涙を拭った。

「・・・私、もう泣いてない。だから離して、クラウド」

ゆっくりと腕は離されたが、正面をむかされれば、壁に押し付けられた。ひどく悲しそうな顔をしたクラウドに何もできなくなって、静かに彼を見上げる

「大事なことを忘れている気がするんだ、」

「・・・・・・どう、かな」




全然、大事なことなんかじゃないよ

貴方にとっては、一瞬の時の出来事だったんだよ、きっと

   

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