壊したくて泣きたくて | ナノ
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「邪魔をした」
そう言って部屋を出ていこうとする青年だったが、
私はとっさに手を伸ばしていた。
「ま、待ってくだい、貴方、行くところないんじゃ…」
「そうだかいつまでもここにいるわけにはいかない。自分で探す」
この世界はきっとそこまで甘くないような気がする。
しかも大剣なんか持ってる人が出歩いたらどうなるかしれている。
息をゆっくりと吐くと、彼に向かって口を開いた。
「ここに、いますか…?」
それに言葉をしばらく発することをしなかった彼を見て、
思わず自分の瞳を見開いた。
「(え、変なこと言った…?)」
「この家にあんた以外は住んでいるのか?」
「いえ、私だけです」
「なら、なおさらだめだろう。」
息を吐いた彼を見て、顔が赤くなるのがわかる。
「…いや、大丈夫ですよ、ね」
「俺に聞くな」
「大丈夫です、それに困っている人をほっとけないんで」
「…わかった、世話になる。」
しっかりとそう言葉を発した彼に微笑んだ。
そして今日からこの広い家に、ひとつの花が咲いたように思えた。
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