壊したくて泣きたくて | ナノ
16033/3
「異世界かあ、こことは全然違うところなの?」
「・・・そうですね、建物や服装とかはそんなに違わないですけど・・・魔法とか、こっちでは使えないです。武器とかも所有できないし・・・」
「安全な世界なのね」
前にクラウドに聞いたことがある。この世界は魔法やら不思議な力がたくさんある、憧れていたけどクラウドはない方がいいと言っていた。無駄な争いや、人が多く死ぬからと。でも、魔法や武器がなくったって人間は争い、人を殺してやまうことだってある。怖いね・・・、なんて二人で話したときをよく覚えていた。目の前の綺麗な女性、ティファさんが小さく笑えば、自分も笑顔になった。
「NO NAMEが落っこちてきて、びっくりした!」
「ご、ごめんね驚かせて・・・」
「でもよく助かったな」
可愛らしい少女マリンと同じく可愛らしい少年デンゼル、に微笑むと、クラウドを下敷きにしちゃったから・・・と言う。彼がいなかったら私は死んでいたと思う。彼は怪我とかをしていなかったようで、良かった。あのあと、私が異世界から来たと語れば、クラウドは不思議そうな顔をしながらも、なんとか信じてくれた。みんなで暮らしているというこのセブンスヘブンというところにも連れてきてもらって助かった
「NO NAME、帰れるまでここにいていいからね」
ティファさんの優しい気遣いに甘えるしかない、お礼を言えば、また優しい笑顔を返される。ここはお店のようだし、私にできること、たくさんやろう。私、ちゃんと笑えてるかな。内心ではズタズタだ、心臓が握り取られてしまいそうに苦しい、心の中で息ができなくなったみたいに、苦しい。クラウドは私のこと・・・覚えてない。何も、覚えてはいなかった。約束のピアスのことも、きっと忘れてる。でも・・・会えたことだけでも、感謝、しなくちゃ・・・。
どんなに苦しくても、あの日、貴方がいなくなってから感じた苦しみには
かなわないはずだから
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