壊したくて泣きたくて | ナノ

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誰だ?

知らないはずの俺の名前を呼べば、目の前で、涙をこぼして、それでも・・・、それでも嬉しそうに笑う。名前を呼ばれた声は少し高くて、鼓膜を揺らせば心地よく耳に入り込む。聞きなれたようなその声に、疑問がいくつも浮かんだ。

俺は、知らない。

名前も知らない、

だがその一言で、目の前にいる彼女の瞳は見開くと小さく呼吸が聞こえたような気がした。

「えと・・・、」

戸惑ったように、声を出すが、それでも笑顔を保とうとしているのか、苦笑いを浮かべる彼女に心の中の何かが痛む。ズキリ、そんな音をたてて心がきしんでいく、どうして。

「・・・やっぱり・・・忘れちゃった?」

彼女が浮かべた微笑みを見た瞬間、後悔した。言うんじゃなかった、知らない誰かでも、目の前の彼女のこんな笑顔、見たくはなかったと心の中がざわつく。どうしようもないこの心の変化に、自分だって戸惑いを隠せない。

「・・・俺と会ったことがあるのか、」

「うん、」

「悪いが、俺は・・・」

「そっか、」

息を吐き出しながら囁かれた言葉が、ひどく切なくて、胸の中がきゅう、と縮こまる。







・・・どうして、こんなに苦しいのだろうか

あんたは、一体・・・誰なんだ









「あの・・・ごめんなさい、ここは・・・どこですか?」



 

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