壊したくて泣きたくて | ナノ

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なんでこんなこと聞くんだろうね


どうしてクラウドを外に連れ出したんだろうね


いつかはわかってたの、きっと彼は元の世界に戻ってしまうって


目の前のクラウドがいなくなってしまう、すごく切なくて、悲しい


「良かった」


なんだか、さよならが迫ってるような気がして、怖い


「NO NAME」

「ん?」

「ありがとう」

「なに、言ってるの?」

まだ、お別れじゃないよ

そんな顔しないで、お願いだから“ありがとう”なんて言わないで

溢れ出しそうな気持ちを抑えるのに必死で、涙が出そうになる

クラウドを困らせたくないのに、嫌だな

浪の音が耳元で反響する、静かで冷たい空気が二人を包んでいく

「これ、もっててくれ」

「え、なに?」

クラウド差し出した拳、ゆっくりと開くとそこにはクラウドが見つけていたオシャレなピアスがあった。

「持ってれば、いいの?」

受け取れば、クラウドはゆっくりと頷いて、まっすぐにNO NAMEを見つめた

交差する視線がなんだか熱くて目が反らせない

ピアスをゆっくりと包んで、息を飲み込む

「それを約束の印にしたいんだ」

「…約束?」

「あんたとまた、会えるように」

噴火してしまいそうな胸、溢れ出しそうな感情

涙がゆっくりとこぼれ落ちると、クラウド指先が頬に触れて涙を拭う

「……うん、」

その指先から体ごと全部、自分のものであったらいいのに

ずっと一緒にいられればいいのに

告げたい気持ちが、告げられればいいのに


どうして、神様は私に優しくしてくれないの


「泣くな」

瞳を閉じて、涙を拭うけど、止まらない

響くクラウドの低すぎなくて高すぎない声、安心できる静かな声

その瞬間額に感じた柔らかい感覚、額から身体が熱くなって、甘い感覚が伝わる

ゆっくりとそれは離れると、大きな手が頭を撫でた

時がとまったかのような感覚、

ゆっくりと瞳を開けば、目の前にあったクラウドの姿はもうなかった



「ふ…っ…」



残された一つのピアスが、胸をぽっかりと開ける

足りないものを補おうとするように心が息をしているように、

ぽっかりと穴があいた心から空気が通り抜けるように




ああ、切ない







君はもういない



   

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