壊したくて泣きたくて | ナノ

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「海にいってみたかったの、寒いけど」

「…寒いな」

「でも、静かで冷たい海もいいでしょ?もしかして海見慣れてた?」

「いや……」

砂浜を裸足で歩くNO NAMEは海水に触れると、冷たい、と言って笑う。

「やっぱり冷たい、見てる方がいいや」

NO NAMEは再び歩き始めると、その後ろをクラウドはゆっくりと歩く

涼しい風がクラウドの髪を揺らす、穏やかな日々が続きすぎて

なんだか逆に怖くなる。

前を歩く小さな背中が、見えなくなってしまいそうで

急に走り出したNO NAMEに目を見開いて、息を吐き出す

「転ぶなよ」

「子供じゃないんだから大丈夫だよっ」

楽しそうに笑うNO NAMEはどんどん離れていく、その姿をぼんやりと見つめながら

瞳を閉じた。


「(なんで、こんなに恐いんだ)」


NO NAMEは俺のために外に連れ出してくれたのに、気が乗らない

電車酔いしたからじゃない、胸が重いんだ

だんだん離れていく姿を、見つめていたくない

「NO NAME!」

「どうしたの?」

数メートル先で止まったNO NAMEは不思議そうに顔をかしげて後ろを振り返る

言葉が出てこない、息がつまりそうになる

何か言いたかったはずなのに、どうして

NO NAMEはしばらくしてクラウドの元まで駆け寄ると、穏やかに笑顔を作った

「ねえクラウド、この世界に来て良かった?」

「…ああ」

「本当にそう思ってる?少しでも、クラウドの役にたてた?」

「……うん」



 

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