壊したくて泣きたくて | ナノ

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「帰ったのか?」


「そう、なんか家に帰らなくちゃならなくなったとかで」


お風呂から上がってきたクラウドは先程まで廉が座っていた椅子に座る。

「(まだ少し濡れてる)」

濡れる前と変わらない髪だったが、まだ雫が残っているのに気づきNO NAMEはタオルでクラウドの髪をわしゃわしゃと掻き立てた。

「風邪ひいちゃうよ!」

「ちょ、もう少し優しくしてくれよ…」

NO NAMEは笑みを浮かべると、丁寧にクラウドの髪を整えていく、

「なんでこんな綺麗な金髪なの、羨ましいわ」

「これぐらい普通だろ」

「いやね、この国は黒髪が普通だからさ、まぁみんな染めてるけどここまで綺麗じゃないの」

だから羨ましい、クラウドの髪に触れていると、クラウドがNO NAMEの手を掴む。

NO NAMEは少し驚いて、慌てて手をひっこめた。

「ごめん、嫌だった?」

「違う、くすぐったいんだ…」

少し恥ずかしそうに囁いたクラウド、大きな背中を抱きしめてあげたい、

抱きしめたい、そんな衝動にかられながらも、息を飲む。

「前も思ったんだが、お前の手ってすごく細いよな」

「…いや全然だから、最近太っちゃって困ってるの」

「…握ってると折れそうで、怖い」

確かめるようにNO NAMEの腕をゆっくりと握ったクラウドの白い手に、NO NAMEの心臓が跳ねる。

さっきと全然違う、鼓動の動き。

「(そんな触れ方しないでよ)」

顔に熱がこもるのがわかる、NO NAMEは息を吸い込むと、ゆっくり吐き出した。

「で、でも折れないから大丈夫!!」

「(だからもう離して欲しい、じゃないと心臓が持ちそうにない)」

だが中々離れないクラウドの手、気づいたらクラウドの視線はNO NAMEに注がれていて

NO NAMEの瞳が瞬きした。

「どうしたの?」

「…なんでもない」

小さく吐かれた言葉と同時に手が離れる。

変な熱も、消えていって


クラウドの視線だけが、忘れられない


   

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