壊したくて泣きたくて | ナノ

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「俺は向かいにいこうと何回も電話したんだぞ」

テーブルに向かい合いながら、えらく笑顔を浮かべて話す廉に瞳を細めながら、

風呂から上がったばかりのNO NAMEはため息をついた。

「…携帯、電源切ってたの」

「んで、二人で濡れてきたと」

「もういいじゃん!」

NO NAMEは強めにそう言うと、廉はまたも笑顔を浮かべた。

細くなっていた瞳を、瞬きさせて、廉はさっきとは違う笑みをNO NAMEに向ける

「お前ら、付き合ってないだろ」

言葉が一瞬でなくなったNO NAMEは、自らの拳を強く握る。

お風呂から出たばかりなのに、汗をかきそうな心理状態におちいっていた。

「……は、はぁ?」

今すぐお風呂にいるクラウドに助けを求めたかったNO NAMEだが、目の前の廉の表情は変わらなかった。

「わかるよ、お前ら見てれば」

「……なんで」

「さぁ…?」

目の前で悪戯っぽい笑みを浮かべる廉に諦めたのか、強く握り締めていた拳を緩めてNO NAME小さく頷く。

「うん、私たち別にそうゆう関係じゃないけど…これには理由が」

理由、クラウドがこの家にいる理由。

一番聞かれたくない理由だし、どう話せばいいのか分からない。

自分に分かることも少ない、彼が異世界の、住人であること。

「…まあ、別にいいけどね」

「え?」

「お前は今まで何かと暗い表情してたのに、クラウドといると幸せそうだから」

頬に熱がこもるような言葉、そんなんじゃない、と否定したいのにNO NAMEの口からは言葉が出てこない。

「まーお前がクラウドに片思いしてるのなんかバレバレ」

「うっさい!!!」

廉の顔面に拳をいれそうになるのを必死で我慢しながら、唇を噛み締めて恥ずかしい気持ちを抑える。

「まぁいいんじゃないか、じゃ、俺帰るわ」

「え?あれ?泊まってくんじゃなかったの?」

「うん、その予定だったけど、一回家に戻らなくちゃいけなくてさ」

「そう…」

廉の大きな手がNO NAMEの頭を撫でると、くしゃくしゃと髪をかきたてる。



「クラウドによろしくな、がんばれ」



最後の言葉は、余計だった。


なんだかんだで、やっぱり良い兄だから困る




 

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