壊したくて泣きたくて | ナノ

0903
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雨の粒が、頬にあたる。

ああ、あの日もこんな雨が降っていた。

ザックスとの最後の日、雨が彼の血を広げて、世界が真っ黒に染まった、あの日。



「……くそっ、」

走り去ったNO NAMEのことで頭がいっぱいになる。

どんな顔してた?頬を伝う雫はなんだった?

そんなの分かってる。涙だ、あいつは、泣いていた。

苦しい、過去を思い出すよりも、数倍に苦しい、

過去以上の苦しみがあるなんて知らなかった、息ができなくなる

「なんでだ、」

NO NAMEの言葉は、元気づけようとして言った言葉だと分かっていた、なのに感情が交差してぶつかって、

俺は、八つ当たりしただけだ

訳の分からない俺の思考が、怒りをNO NAMEにぶつけただけ



嗚呼、なんて救いようのない馬鹿なんだ俺は


また罪を抱えて、逃げるのか

俺は人のことなんていえない、自分自身もその真実から逃れようとして

向き合おうとすれば、この結果だ。


「…NO NAME、」

あいつまでも失ってしまう気がして、怖い

自然と拳に力が入って、脳内で浮かぶNO NAMEの笑顔。

“ありがとう、って言ってきたの”

泣きながら、こうして良かった、と笑うNO NAMEのようになりたい

後悔なんかしたくない、



ならどうすればいい、俺もちゃんと正直になるんだ

だから追いかけろ、泣いているNO NAMEを全力で追いかけろ






涙をこぼして走り去るNO NAMEの腕をつかめ






追いかけるんだ

   

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