壊したくて泣きたくて | ナノ
06022/2
ガチャ、と玄関の音がした。
テレビもつけずに考え込んでいたクラウドの耳にそれが届くと立ち上がる。
ゆっくりとリビングにはいってきたNO NAMEの姿を見る。
「……NO NAME」
「…私、やり直したいって言わなかった」
それが何を意味するのか、クラウドにはわからなかった。
ただ目の前のNO NAMEの表情はどこか嬉しそうに、輝いている。
「……ありがとう、って言ってきたの」
なのに、止まったはずの涙がまたポロポロとこぼれ落ちてくる。
クラウドが思わず手を伸ばすが、肩に触れようとした手が止まる。
「(俺は……)」
小さく顔を歪めてクラウドは小さく息をこぼした、NO NAMEの顔を覗いて、頭の上に手を載せる。
「…頑張ったな、」
「うんっ」
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