壊したくて泣きたくて | ナノ
05022/2
「あ、ごめん。ちょっとお鍋みてて」
クラウドにお鍋を任して、携帯を見ると宛先には秋真と表示された。
深呼吸して携帯を開いて、リビングの方に向かった。
「もしもし」
『あ、おはよう』
「おはよう。」
『あのさ、大事な話がある。』
「うん、」
ちゃんときこう、これからはちゃんと話を聞いて、いっぱいお話しよう。
瞳を閉じてちゃんと考えた結論だった。
『別れよう』
声が出なかった、息ができない。
『俺さ、もう無理だと思うんだよね』
「わ、たし…っ…」
なんでこんなにも辛い…?
私は彼のこと、まだ好きになれていなかったはずなのに。
どうしてこんなに胸が痛いの…?
逆切れするよりも、苦しい。
『だから…ごめん。』
プツリ、と切れた携帯からは無機質な音しか聞こえなくなっていた。
どうして、どうして…。
抑えきれない涙が、ポロポロとこぼれ落ちた。
たっていられなくて崩れ落ちた私に気づいたのかクラウドは駆け寄ってきた。
「どうした、NO NAME…?」
涙をこぼす私を見たクラウドは一瞬目を開くと、私の肩に触れた。
「……何か、あったのか?」
「…別れよう、って言われた」
途切れ途切れの声だったが、ちゃんとクラウドに伝わっていたようで、
クラウドは顔を歪ませると、瞳を細めた。
「…まだ、間に合う」
「…え、」
「好きなんだろう、だったら…まだ間に合う」
“好きなんだろう”
私は、彼が、好き…?
だから、この胸はどうしようもなく痛いの?
好きになるよう努力するんじゃなくて、秋真のことちゃんと好きだった。
「……わたしっ。」
「大丈夫だ、あんたは逃げてなんかいない、十分努力してる」
どうして、君は一番欲しい言葉をくれるんだろう…。
ガクガク震える足を立てがらせると、歪んで見えない視界、瞳をこすって、前を見た。
「私、逃げないよ…っ…」
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