傍に | ナノ
02011/3
「んで、恐ろしいほどにあんあたは無口だな。」
「………」
目の前でお茶を啜っているシカクの表情は相変わらず、興味なさそうな顔をしていた。
用意されていた家は以外にも綺麗で、
生活用品などは揃っていた。
案内してくれたシカクにとりあえず置いてあるお茶を出した所。
「……なんか、喋ってくれよ。」
話すことなどあるのだろうか、
私には話題なんかないし。
シカクの事もよく知らない。
「ったく…はぁ、俺もあんたもどっかの誰かみたいにお喋りじゃないようだな。」
それにクスっと笑ったシカクはなんだか新鮮な感じだった。
なんだか呆れた表情に近かった彼の新鮮な表情に驚いていると、眉を寄せて、なんだよ…、と聞かれてしまった。
「貴方の笑顔って……なんだか綺麗だね、」
「……はぁ?」
いけない事を言っただろうか…、
今まで以上の歪んだ顔で私を見る瞳はなんだかさっきとは違う感じがした。
「……そんなの言われたことないぜ?」
本当に変なことを言ってしまったようだ、
なんだか後悔。
素直な気持ちを出してはいけないな。
「…はぁ………」
深くため息をついたシカクは不意に立ち上がって口を開いた。
「それじゃあそろそろ失礼するからな。」
玄関に向かって歩いていくシカクをぼーっと見ていたらシカクが振り返った。
「…あんたってさ、忍だよな」
「え……、」
その質問に答える前に、
視界が歪んだ気がする。
忍って、私が…?
「違うと、思う。」
「…そうか、」
小さく頷いて出ていったシカク。
なんだか広く感じるこの部屋はシカクあいなくなったからだろうか。
たった一人いなくなるだけで、
こんなにも、広い。
さて、何をしようか。
なんて考えない、何かをやる気も今はしなかった。
なんだか心が真っ白になってしまったかのように軽い、でもなんだか重い。
複雑な感情なんかないけど、
何も思い出せない、
でもなぜか頭に流れ込む情報に疑問を持つ自分はいる。
でもこの里の火影は甘い。
私がもし、危険な存在だったのであえば。
私は牢獄にいるべきなのだ。
私のことなど分からないけど、
今はそこにいたほうが楽なような気がする。
お前の居場所はここしかない、
なんだか頭に深く響いた声に、
変な気持ちになった。
この声の主は誰だろう
聞いたことのある声だった。
でも、
私の記憶から詠みがえる声はなんて冷たいんだろう、
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