傍に | ナノ

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NO NAMEの目の前にいる男、金髪の髪に青い瞳。

風が二人の髪を揺らす、髪の隙間から見える彼の顔、瞳を交差させる。

「……」

何も答えないNO NAME、ミナトはNO NAMEの服にこびりつく血に視線を移すと、

瞳を細めた。

「俺の仲間を、殺したの?」

その言葉は重かった、NO NAMEの頭の中で何回も響いて、身体を繋ぐ糸を切ってしまいそうな感覚に覆われる。

すっと息を吸い込むと、NO NAMEは瞳を瞬きさせた。

「そうだよ」

落ち着いた声だった、ミナトは変わらぬ瞳でNO NAMEを眺めていた。

「…私を、殺す?」

静かに響いた声にミナトは瞳を細めて答えた。

「…君が、僕の仲間を殺したのならば………」

「そう」

NO NAMEが笑った、切なそうに、嬉しそうに、笑顔を浮かべる。

それにミナトの胸は押しつぶされそうになった、何か違う感情でいっぱいになる。

なぜ?どうして?疑問でいっぱいになる想いがミナトの心を支配する。

今まで抱えてきた疑問が破裂するみたいにミナトは顔を歪めた。

「本当に、・・・君なのかな」

うっすらと浮かべたNO NAMEの笑み、緑色の変わらない瞳が輝き続けている。

NO NAMEは答えなかったが、否定はしなかった。

ミナトの瞳に映るNO NAMEは本当に、あの時出会った少女なのかと。

彼女はこんな笑い方をしただろうか。ひどく胸を苦しめる笑顔を浮かべただろうか。

ミナトは瞳を閉じると、再びNO NAMEを瞳に映した。

「私は、殺人兵器のNO NAME」

全身の血が逆流したように、蠢き出す。

それは真実なのか、ミナトは小さく深呼吸する。

「殺して、くれる…?私を、」

どこから来る言葉なのか、どんな思いを抱いて言っている言葉なのか、

本気なのか、ミナトは瞳を細める。

「ミナト!大丈夫か?!」

「!?」

遠くで聞こえた仲間の声、どうやら追いついたようだった、

ここに仲間くればきっとNO NAMEは殺される。

当たり前だ、自分の仲間を何人も殺してしまったのだ。

相変わらずうっすらとした笑みを浮かべるNO NAMEを見て、ミナトは小さな声を出した。

それと同時にNO NAMEと一気に距離が縮まったミナト、NO NAMEを抱き上げて、

地面を蹴った。

「…なに、を…」

下から聞こえるNO NAMEの声、ミナトは後ろから近づいてくる仲間の気配を感じながら

前を見据えた。

「俺は分からない、あの時君がいなくなったわけを、君が人を殺したわけを、」

「…知らない方がいい」

ミナトはその言葉を聞くと、地面を強く蹴って大きく飛んだ。

どれくらい走っただろうか、もうだいぶ遠くにきてしまった。

仲間の気配も感じない。

小川の近くでNO NAMEを下ろすと、NO NAMEの左手を掴んだ。

いきなりの行為にNO NAMEは瞳を見開き、振り払おうとしたが、ミナトはそれを許さなかった。

NO NAMEの緑色の瞳がミナトを見上げる、以前と変わらない緑色なのに、

それはミナトを苦しくさせる。

ミナトがNO NAMEの両手を拘束している枷に触れると、NO NAMEを見つめた。

「俺は知ってはいけないのか?君が消えてしまったわけも、人を殺すわけも、そんな顔して笑うわけも…この鎖のわけも」

NO NAMEの瞳が揺らいだ、同時に枷から伸びている鎖も揺れる、

重苦しい音が空間に響いて、乾いたNO NAMEの呼吸が聞こえた。

「…よく見てよ、私は人を殺す兵器なの、だから理由などどうでもいいでしょう…?」

真っ赤に染まるNO NAMEの手、NO NAME自信も苦しげな顔でそれを眺めていた。

「理由など聞くぐらいなら、早く私を殺したほうがいい」

「…、」

「貴方なら、きっと殺せる…」

その意味が知りたくて、でも少し恐かった。

知ってしまったら、もう戻れないような気がして。

知ってしまったら、自分が何かに支配されてしまいそうで。

でもこの両腕は、NO NAMEの身体を抱き寄せた。

「その理由が、知りたいんだ…っ…」

細い身体、驚いたような声がNO NAMEから発せられる。

「離して、私が…貴方を殺す前に……っ、」

その瞬間NO NAMEの瞳が輝いたような気がした。そしてNO NAMEの手に握られたクナイが

ミナトへと迫ったが、ミナトはクナイを持つNO NAMEの腕を受け止める。

「…っ、」

苦しそうに吐かれるNO NAMEの息とは裏腹に、強い力だけが感じられる。

折れてしまいそうなこの細い腕にどこからこんな力が出るのだろうか。

NO NAMEは自力でミナトを引きはがすと、荒く息を吐き出した。

「だから言ったでしょう…?!私は貴方を殺してしまう…!その前に殺せと!!!私に出された命令は…狩り、なの…っ」

「狩り…?」

その瞬間NO NAMEの動きが止まった、そして顔を上げたNO NAMEは怯えているようだった。

一歩また一歩と後ろへ下がったNO NAMEに近づこうとしたが、

一瞬でNO NAMEの姿が消えてしまった。

もうないNO NAMEの姿、ミナトは静かに顔を歪めた。


「ミナト!?大丈夫か?!」


追ってきたであろう仲間の声、それにミナトは小さく呟いた。


「逃げられました、すいません」






     

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