傍に | ナノ

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「いやだぁっ……」

風を切る足はどんどん進む、気づいたらそこはあの林だった。

まだ日が暮れていないはずなのになぜだが暗いこの場所に身体が震えた。

脈打つ心臓が壊れそうなくらいに膨らんでいるようで、恐怖を感じる。


―――見ろ、これがお前の真実。


聞こえた声と共に瞳が閉じられれば、身体がゆっくりと倒れた。


暗い視界に見えたのはあの白い手だった。

ゆっくりと開かれようとする拳、視線をそらすことなどできなかった。

恐怖で震えているのがわかる、


ゆっくりと開かれた白い手から溢れ出たのは血だった。

赤い血がダラダラとこぼれ落ちて、白い手を真っ赤に染め上げる。


あれは見覚えがある。

そのとき

電流が頭に走ったかのような感覚でいっぱいになった。


足りなかったものが戻ってくるような感覚、白かった私を、黒に戻したのだ。



「………、」

ゆっくりと瞳が開かれると、身体を起こす。

暗い林が元の明るさを取り戻していた。


歩み出す足は林を抜けようとしていた。






   

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