傍に | ナノ
02011/3
私は、何者にもならない。
私は私のままで。
――戻れ、こっちに来い
―お前の居場所はそこではない。
分かってる。ここじゃない。
じゃあ、どこなの
私は一体どこに行けばいいの。
―――こっちだ、来い、来るんだ。
白い手がこちらに伸びた、白かった世界の向こう側、
暗い世界から手を伸ばすひどく白い手はみたことがあるように見えた。
固く閉じていた拳からこぼれ落ちるのは赤いものだった。
ポタポタと落ちていく赤いもの、それは血。
この白い手のものなのか、他人のものなのか、わからなかった。
なので、ひどくその血が恐かった。
拳が開いたら何があるのだろうか、
お願いだから、開かないで。なんだか胸が、震えているようだった。
「!」
瞳を開けるとそこは白と黒の世界ではなかった。
そこは天井、私の家の天井。正確には火影様に貸していただいている家の天井。
息を吐くと、再度瞳を閉じた。
フラッシュバックするのはあの白い手だった、
すぐに瞳を開けて深呼吸する、瞳を閉じると、あの白い手が見える。
「…、」
白い紙に真っ黒の炭が垂れたような気分だ、
段々と侵食しはじめる黒が消えない。
→
[しおりを挟む]