傍に | ナノ
01011/3
「よ、ようやく見つけたってばね!」
背筋の凍るような声にため息をつけば、ゆっくりと振り返った。
そこには鬼の血相のクシナの姿、
そして横にはヨシノの姿もある。二人ともいつもより歪んだ表情を抱えて
俺を鋭く睨んだ。
自然を足は一歩後ろに下がって、そのまま駆け出そうとすれば
腕を握られる感覚がした。冷や汗をかきながら自分の腕を見ると、
想像通りそこにはクシナの手があった。
「……説明してくれるわよね?」
「だから…里を案内してたんだって」
「案内?……貴方がすればいいのに」
その言葉にさすがに顔を歪ませてしまった。
でも込上がった思いを口にするのはやめておこう。ヨシノの目線がキツイから。
まったく女ってのは恐い。
好きな男のためにすごいことをするし。
その男を縛ろうとするやつもいる。
わからないわけではないが、いざ熱くなっている奴が傍にいると思わず息を飲んでしまう
「で、あの子の家知ってる?」
「……なんで。」
知っている。そうは言わずに重い視線だけをクシナに向ければ、
思わずクシナの瞳は見開いた。
「…と、友達になりたいの」
「……だから、なんで」
「友達になることに理由なんかないでしょ!」
ヨシノはそう言って俺を睨むと、クシナも同じように言い返した。
まったく何をするんだ。こいつらは。
ただでさえ血の気がおおい奴らだ、何をするかわからん。
「知らねー」
「嘘つけ!」
「ちょ、シカク?!」
スキを見て手を振り払えば勢いよく飛び上がって家の屋根に登った。
下で騒ぐクシナ達を見下ろすと、口を開いた。
「知っててもおしえねーよ」
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