傍に | ナノ
03011/3
お前に問おう
お前は、
一体何者だ
知らない。
だって、私は記憶がないんだもの。
取り戻したい、とは思わない。
さっきまでこの家にいた、
ミナトという少年。
シカクと同じぐらいだった。
でも、彼からはまた違うものを感じた。
彼は私を疑っている。
疑うくらいなら、ここに連れてこなければよかったのに。
また瞳を閉じてそう考えると、
急に頭が痛み出した。
徐々に大きくなっていく痛みに、
少し顔を歪ませた。
「ぐ…ッ、」
思い出せ、お前の本当の姿を
「本当の姿…?」
聞こえた声は、頭に染み付いて離れない。
本当の姿など、知らない。
知らない、知らない、知らない。
思い出したくもない。
私は何者にもならない。
戻りたくもない。
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