傍に | ナノ
02022/3
「ねぇクシナ聞いた?」
「聞いたわよ!!」
「そんなに怒らなくても…ま、仕方ないか」
赤髪の少女クシナとその隣の友人ヨシノ。
クシナの顔は強ばっていた。
その理由は先ほど耳に入った話。
「でもミナトが女の子連れてくるとはね〜」
「ミナトは助けてあげたのよ!」
クシナの大きな声に苦笑いしながらヨシノは話を続けた。
「でも緑色の綺麗な髪をしてた、って噂。」
「髪なら私は負けてないわ!顔はどうだかわからないじゃない。」
「まぁ…そうね、」
二人は団子屋のイスに腰掛けながら、そんな会話をしていると、前から見知った顔が歩いてきた。
「あ、シカクーッ!」
それは二人の友人で同じ忍で奈良シカク。
こちらに気づくと、変わらないペースで歩いてきた。
「どうしたの?任務は?」
「今さっきこなしてきたとこ」
「早くない?」
「ね、さっき呼び出されたばっかじゃない?」
クシナとヨシノは顔を見合わせると、
シカクは、あー、とつぶやくと、少し考えるように首をかしげた。
あれ…あいつの事って、言っていいんだっけ…?火影様に聞くの忘れた…。
「まぁ……いいじゃねぇか!」
「「はぁ…?」」
ま、いっか。と団子をほおばり始めた二人。
それにシカクは安心したように息を漏らした。
「ねぇ聞いた?ミナトの話!」
「女の子里に連れてきたったやつよー!」
「………へぇ。」
そんな噂になってんだ。
これじゃあ隠す必要もなかったな。
「ああ、さっきの任務のその"女の子"って奴を案内してきたとこだよ」
「うっそ!」
「早くいいなさいよ!!」
「って!!!」
ヨシノの手のひらが勢い良く背中にあたって、じんじん痛み出す背中。
くそ、いてぇ……
「その子、どんな感じなの?!」
「可愛い?!」
「はぁ…?!」
ここで答えなかったらさっきよりもひどいのがくるな…。
「普通。」
「なんだ、じゃあクシナ勝てるわよ」
「良かったぁぁぁ!!!」
「じゃ、俺は行くぞー」
二人から離れて歩き出すと頭にあいつの顔が浮かんだ。
そういえば、あいつは名前がなかったな。
あいつに会った瞬間感じた少し妙なチャクラ。
なんだか先がみそうにないチャクラ。
でも忍ではない彼女がそんなチャクラを持つことができるのか、
記憶がない、追われた少女、ミナトの話では若い男が付いてきたって話だった。
あいつは何者なんだ、
そう考えるよりも、
なんだか疑問に思った事。
彼女の心が無に近い気がした。
何もわからないのはわかる、
でも、なんの反応も示さないのだ、
まるで、
世界に興味がないように。
そのとき、頭に浮かんだ言葉。
あんなこと初めて言われた、
なんだか忘れられない言葉。
そのときだけ、あいつの表情がなんだか柔らかく見えた気がする。
ほんと、
変な奴。
← →
[しおりを挟む]