傍に | ナノ

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鉄の臭いと混ざり合った血の匂い、鎖につながれた自分がすごく嫌でたまらない。この臭いになれてしまった自分も恨めしい

「・・・何か食べたのか」

怪しいチャクラを持つ、面の男の姿が鉄格子の向こう側に見えた、同時に響いた声に久しぶりに鼓膜が揺れたような気がする。

彼の名前はマダラと聞いた。彼がここに来るのは二回目、最初に会った時から随分と日にちがたったような気がする。この中にいれば、日にちなどどうでもやくなってしまうけれど。足を曲げて両足を抱える、冷たいこの空間で必死に身体を温める。

するとバサリと、頭にかかったもの。それを取り上げれば彼のまとっていたマントだった。いつのまにか鉄格子の中に入ってきた彼を見上げれば、表情のわからない顔が傾く。

「何も与えられていないのか」

食事など、今は食べる気などしない。このまま死んでしまえたらいいけれど三弥は絶対にそんなことさせない。

「・・・死ねそうな時に無理やり食べさせられる」

「なるほどな」

腕を組んだマダラは私を見定めるように見ている気がする。彼がどんな瞳をしているかわからないけれど、きっとこんな私を笑っているのだろうか。

なぜだが頭に被せられた彼のマントを彼に差し出せば、それを受け取らず無言が続く。ようやく彼は動くと、私の隣に腰を下ろした。その動作をゆっくりと眺めていると、彼の言葉が聞こえた

「羽織っていろ」

小さく聞こえた声に、少し驚く。それ以上何も言わない彼の面に包まれた横顔を眺めていれば、彼はこちらを見たので、そのマントを羽織らせてしまうことにした。死にたいのに、いっそ死んでしまいたいのに、寒いのは嫌なんてなんだか変だ。

「・・・一人で寒い中、死んでしまうのは嫌なのかもしれない」

自然に溢れた私の言葉に、マダラは何も言わなかった。何かを考えるように腕を組んで鉄格子を眺めては、私を眺める彼に、最初の怖い印象は消えていったような気がした。ただ彼はずっと私の隣にいて、鉄格子の中が窮屈に感じて、マントが暖かくて、自然と瞼を落とせば、眠りについていた。




「・・・へぇ」

冷酷に、低く響いた三弥の声がして。瞳をこじ開ける、想像していた通り目の前に立っている三弥の顔はとてもこわばっていた。何か大事なものをとられた、子供のような表情、でも子供のような感情ではなく、もっと怒りのこもったそんな、なにか

いつのまにかいなくなっていたマダラ、とマダラが残したマント。それを握り締めれば、彼の怒っている理由がなんとなくわかった

「・・・あの男に同情でもされたか?お前はどうしようもなく化け物だから可愛そうだとでも言われたか?」

ニヤリと笑う三弥はいつも以上に狂っているような気がした。伸びてきた手に首を絞められれば息ができなくなる。もうろうとする息の中で、何も思い浮かばなくなった

「お前のことは教えなかったのに・・・この場所に来ていたとは・・・まったくすごい男だ」

「・・・っは・・・」

いいからそのまま殺してくれ、と叫びたくなった。彼が怒りにまかせて私を殺してくれれば全てが楽になる。でも、少し・・・いや、やっぱり寒いな

瞳を閉じよようとした時、三弥の手の力が緩んだ。視界にうつった彼の腹部を貫く刀、そこから染み出す三弥の血に視界が揺らぐ。そして響いた声が、三弥の後ろから聞こえた

「悪いな、お前との契約は破棄させてもらう」

「・・・マ、ダラァ!!!!」

三弥のかすれた声が大きく響く、動じないマダラはその刀を抜けば、三弥の体も手も地面に崩れ落ちた。彼は、死ぬだろうか

私をみたマダラを呆然と見つめていると、手を伸ばされた

「物を忘れた」

彼は忘れ物をしたのだと脳がやっと確信すると、もっていたマントを手渡そうと腕を伸ばした。マントではなく、自分の腕をつかまれれば、ぐい、っと腕をひかれる。

彼の身体に引き寄せられると、耳元で聞こえた言葉に目を丸くする

「お前を、だ」








   

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