傍に | ナノ

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「ミナト!どこ行ってたんだよ!」

「ごめん…」

仲間のもとへと少女を運ぶと、仲間の顔は濁る。

「おい、誰だよこの子…怪我してんぞ」

「うん、だから早く里に…」

「分かった!」

この森から離れないと。

またあの男がくるかもしれない。






傍に 第一章 01話





逃げられない




頭の底で、声が響いた気がした。

頭の中で絡まっていたいとが段々と緩んでいくような感覚、中から大事なものが抜け落ちていくようだった。

なんだか切ない感覚だった。

暗かった視界が明るくなった。

閉じられていた瞳が開いたのだ、最初に見えたのは初めて見る天井だった。

私は白いベットに横たわっていた。

白かった視界に、黄色く細い髪が目に入った。

「気づいたか」

高すぎず、低すぎもない、すっと耳に入ってきた声。

視界に映る綺麗な顔だちをしている女性、

また、口を動かした。

「おい、大丈夫か?」

「……ぇ、は、い」

小さく言葉を発した私を見て、

女性は頬を緩めた。

「私は綱手だ、お前の名前は?」

その言葉に戸惑った。

思い出せないのだ、自分の名前が。

私には、あったはずだ。

名前というものが、

大切なものが、それがどう頭を捻っても、よみがえってはくれない。

では、私は一体、誰?

「なんだ、自分の名前がわからないのか?」

「は、い」

私の言葉に綱手さんの答えはすぐ帰ってきた。

「そうか、やっぱりな。記憶がないんだろう?」

私の頭を指さして言った綱手さんの言葉ははっきり聞こえた。

そうだ、記憶がない。

「お前の体を治していた時に、一応全部検査したんだが、脳に異常があってな。記憶がないかもしれない、そう思ったんだ。」

私の体を治した。

少しひっかかった言葉。

私は、怪我をしていたのだろうか。

自分の手を伸ばすと、白い肌だけが視界に映る。

「まったく、覚えていないんだな」

さっきまでの言葉とは比べ物にならないくらいに真剣にそういった綱手さん。

それに、自然に頷いていた。


「動けるか?」

「は、い」

ここが病室だと知るのに時間は掛からなかった。

前を歩く綱手さんに早足でついていくが、

なんだか足にあまり力が入らなかった。

病院を出ると、どこかの里らしき建物が視界にはいった、

「そうだ、ここは木の葉の里だよ、わからないか?」

「いえ、わかり、ます」

木の葉の里、

それを聞いたときに、次々に頭に流れ込む木の葉の情報。

これは、最初から知っていたことなのか。


少し歩いて、大きな建物にたどり着いた。


「火影亭だ。」


火影、亭。

なら私はこれから火影に会うことになるのか。

私は牢獄に入れられてしまうのか、

それともここを追い出されるのか、

そもそも私はどうして、ここにいるのか。


火影亭の中の大きな扉を開くと、

真ん中のテーブルに手を置いている老人の姿があった。

かぶっている物には確かに火影、とそう書かれていた。


「火影様、連れてきましたよ」

「ごくろうじゃったのう。」

綱手様を見ると、視線を私に移した。

目と目が会ったときに、

背筋にぞっとしたような感覚を感じた。

なんだ、気迫がすごい。

「お前が、ミナトが助けた子じゃな」

火影の発するたびにピリピリとした感覚が襲う。

「おい、どうしたんだ」

綱手さんの疑問そうな視線が自分を見ていることに気がついて、

また背けていた視線を火影に戻した。

それに火影は満足そうに微笑むと、口を開いた。

「お前には記憶がないと聞いている」

「そう、です…」

「本当だな、」

「はい、」

聞かれたことに考えることなどなかった。

ただ、答えるだけだった。

自分がこれからどうなるなんて考えられない。

いや、どうなってもよかったのかもしれない。

「お前はまだ若い、なのになぜそんなチャクラを持っている、」

息をすって、吐いた言葉だった。

チャクラ。

それはなんだ、と考える瞬間にまた、

頭に情報が流れ込んできた。

そんなものがなぜ私の中にあるのか。

そんなことは知るはずもない、

知りたくもなかった、


「分かりま、せん…」


なぜ、チャクラを持っている人など他にもいる。

なぜ、そんな瞳で私を見るの。


「そうか、それも分からないか。」

一回息を吐いて、火影は私をもう一度見た。

「お前はこの里にいることにしてもらう、里以外には絶対に出てはいけない。」

火影の瞳は真剣だった、

それに息を飲んだ時、突然火影の頬が緩んだ。

「なに、牢獄に閉じ込めるつもりじゃない、記憶が戻るまでここで生活してもらうだけだ」

さっきまでの表情が嘘だとでもいうかのように、

なんだか穏やかな笑顔を見せた火影に、

言葉がでなくなった。

「生活には困らないようにしよう、家も用意しよう」

「どうして……そこまで、してくださるんですか」

「ミナトが助けた子だからの、シカク」

シカクと火影が言うと、

音を立てて扉が開いた。

自分より背が高い男はちらっと私を見ると、

すぐに火影の近くまでいった。

「用意した家を案内してやってくれ、」

「はい、」

話が終わったのか、私に向きなおると口を開いた。

「こっち」

火影の部屋を出ると、男の後ろについていく。

大きな背中で、鍛えられているように引き締まった体をしていた。

この人も忍び、

「!」

急に男は止まると、

ふいに後ろを振り返って私の方を見た。


「あんたのチャクラってさ…なんか変だな」

何も言い返せなかった。

それに男は眉を寄せると、また口を開いた。

「あんた、名前は?」

「…わたし、記憶なくて」

「じゃあ名前は分からないか、ふーん…」

あまり興味なさそうにす呟いた彼は、

また前に進み出した。

「あ、俺はシカク、よろしく。」

「…よろ、しく」





 

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