傍に | ナノ

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「は…っ…」

目が覚めたら、自分の手が真っ赤に染まっていた、

小さく息を漏らして、自分のものか、他人のものか、わからなくなった血を見つめる。

涙がでそうになる。

私はこんなこと望んでいない、でも、それも身体は言うことを聞かない。

――どうして、どうして…

もう、逃げられない。

記憶がないままのほうが、楽だった。

こんな現実が自分を支配するのならば、自分が誰だかわからなくなったほうがいい。

その方が、きっといい。

「…、」

こんな毎日に慣れたはずなのに、私は逃げ出した。

自由を夢見て、自分の罪を知らずに、自らの記憶を捨てて

そこで得たものが、今はどうしようもなく辛くて、苦しい。

「(もう、嫌だ)」

明るい世界が怖い、

自分はその世界を真っ赤に染め上げてしまう、

自分を囲むように倒れていた人間達のように、みんな死ぬ。

私が死ねたらいいのに、何度もそう思ったが、叶わず夢だった。

三弥はそんなこと許しはしない、


「!」

人の気配に耳を澄ませた、木々達の後ろの方から数人こちらへやってくる。

顔を歪めて、地面を蹴る、もう人間と出会わないように、

赤いものを見ないように。

「…誰かいたぞ!仲間が倒れている!」

「追います」

追っ手がかかった、数人後ろを追ってくる。

「ぐ…っ…ふ、」

頭痛がする、頭を鈍器で叩かれたかのように痛みに小さく声を漏らした瞬間、

何かが途切れたような気がした。








 

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