傍に | ナノ
03033/3
雨が降り始めた。
それは私を染める赤を流れ落とす。
そして私は里から出た。
もう涙は出なかった。
全てを取り戻したはずなのに空っぽになった心があるだけ、
「待っていたよ」
目の前で微笑んだ、男を私はゆっくりと見た。
「……三弥、」
彼は微笑みを浮かべて、空っぽの瞳で私を見えるのだ。
そして弧を描くその口元は開かれる。
「お前、ほんとバカだな」
彼は笑っている、心から私を笑っているのだ。
「お前が普通の人間と寄り添えるとでも思ったのか?」
次々に浴びせられる言葉をただ呆然と聞いていた、
でもしっかりとその言葉は胸に突き刺さるのだ、
「全部自分のせいだろ、お前の居場所は俺の元しかなかったんだ」
「……、」
「化け物」
今度は微笑みも浮かべないで彼は私に言った。
大丈夫、言われ慣れているから。
もう何万回も聞いたでしょう。
だから、泣かないで、
傷つくことなんかないよ。
だって本当に化け物なんだからね。
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