傍に | ナノ

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雨が降り始めた。

それは私を染める赤を流れ落とす。

そして私は里から出た。


もう涙は出なかった。

全てを取り戻したはずなのに空っぽになった心があるだけ、


「待っていたよ」


目の前で微笑んだ、男を私はゆっくりと見た。


「……三弥、」

彼は微笑みを浮かべて、空っぽの瞳で私を見えるのだ。

そして弧を描くその口元は開かれる。

「お前、ほんとバカだな」

彼は笑っている、心から私を笑っているのだ。

「お前が普通の人間と寄り添えるとでも思ったのか?」

次々に浴びせられる言葉をただ呆然と聞いていた、

でもしっかりとその言葉は胸に突き刺さるのだ、

「全部自分のせいだろ、お前の居場所は俺の元しかなかったんだ」

「……、」

「化け物」

今度は微笑みも浮かべないで彼は私に言った。



大丈夫、言われ慣れているから。

もう何万回も聞いたでしょう。

だから、泣かないで、

傷つくことなんかないよ。



だって本当に化け物なんだからね。



   

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