傍に | ナノ

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明るいこの里がひどく残酷に見える。

笑う人々の声が絶望を蘇らせる。

なんて、なんて悪い夢だろうか。

「また散歩かよ」

歩む私を止めるかのように前に降り立ったのはシカクだった。

瞳がシカクを捕らえると、言葉を発することもなく横を通り過ぎた。

それを横目で見ていたシカクが小さく口を開いた。

「ミナトが、探してたぞ」

頭によぎったのはあの優しい笑顔の持ち主。

だが、それはすぐに赤に塗りつぶされた、ゆっくりと瞳を細めると

息を吸った。

「なんかあったのか?」

シカクの声は優しかったような気がする。

人をからかうような声ではなくて、もっと何かを感じるような声で、

私に問いかける、

それがどうしようもなく胸を苦しめた。

同時に私の黒を読み覚ました。

それは一瞬のことで、自分も理解できていなかった。

ただ、瞳を開ければ前の前で横たわるシカクがいて。

苦しそうに、小さな叫びを上げているのだ、

彼の身体は真っ赤に染まっていて、それを認識した瞬間に

身体の中の糸が切れる音がした。


「ごめんっ…ごめんなさいっ…シカク…っ、ごめんっ」


溢れる、涙が溢れるの、

だって私の両手は赤く染まっていたから、私の頬には彼の血がついていたから。


「…っ、」

瞳を開いて私を見上げた彼の視線がどうしようもなく痛くて、

見てはいられなかった。

だから、私はここにはいてはいけないのだ。

あの白い手が赤く染まるように、私の手も赤く染まるのだ。


「……許して、シカク…っ、」

私は彼から逃げた。

走る足は里の外へと向かっていた、

溢れる涙は、私を元に引きずり込む。

 

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