傍に | ナノ

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ただ日差しを浴びたきて散歩をしたかっただけだった。

この日差しが心地よくて、安心できて、胸を安らげた。

対照的に闇の中だと変な気持ちがぐるぐると頭で回る。

だから夜は嫌いだった。

だから散歩をしていたらシカクに綺麗な顔で笑われバカにされた。

意味が分からないのはこっちのセリフなのに。

シカクは任務がある、と言って行ってしまったので、

散歩を再開することにした。

「確かこっちは…林」

木達からパワーをもらおうか、なんて考えながら先を進む。

だが違和感を覚える。

自分が林に囲まれるごとに胸が疼きだすのだ。


なに、なんだか。気持ち悪い。


「は…」

息が荒くなってくると、ガサっと後ろから音がした。

誰だろうと振り向く気力もなかった。

ただ頭の中で声が響くのだ。


――思い出せ

何度も響くその言葉に顔を歪める。

「…私は、何者にもならないっ」

その瞬間自分の頭にオノが突き刺さるような衝撃をうけると、

ふらりと身体は揺らいだ。地面に倒れる。

そう思っていたのに、一向に痛みは訪れない、

閉じていた瞳を開けばそこには青い瞳がうつった。


「大丈夫?」

状況を理解できないまま、数秒たつと視野が広がった。

ミナトだ。ミナトがいる。

「……あ、」

やっと意識がはっきりすると、自分をミナトが支えていることに気づいた。

すぐさま身体を安定させると、ミナトから離れた。

「…ご、めんなさい」

「ううん、それより大丈夫?」

「う、ん」

それに安心したのかミナトは笑うと、息を吐いた。

「なんでここにいるの?もうすぐ日が暮れるよ」

「散歩してて」

それにシカクのようににっこりと笑った。

「散歩かあ、でももう帰ったほうがいいよ」

暗くなるから。その言葉に空を見つめればもうすっかり赤くなっていた。

暗くなる前に早く帰りたい。走ってでも帰りたい。

「送ろうか?」

「ううん、大丈夫だから」

走ってでも早く帰りたかった私の心を読んだのか、やっぱり送る。と言い放った彼は

私を抱き上げた。

「な、に?」

「急いでいるみたいだから」

それと同時に浮遊感に襲われると、私は空を舞っていた。

これで二度目だ。

でも暗くならないうちに帰れるんであればありがたい。


「さっき、何者にもならない…って言ってたよね」

急な質問に目を見開いた。急だからだけではない。その質問の内容に。

聞いていたんだ、そう思った。

そうならどう説明したらいいかわからなかくなった。

でもすんなり浮かんだ言葉は自然に口に出ていた。

「元の自分に戻りたくないから」

前に私は恐いと言ったことがある。それからの自分の言葉だった。

「……恐いから?」

「うん、」

それにミナトの表情に笑みが浮かんだ、それをぼーっと見つめていると、

その視線はこちらに向く。

「戻らなくてもいいんじゃないかな」

「…戻らなくてもいい?」

「ん、君は君のままでいればいいんだ」

ここの火影は私の正体を知りたがっているはずだ。

彼もまたその一人、私を警戒する一人のはずなのに。

その言葉は一体どこからきたのか、よくわからなかった。

わからないくせに、妙に胸に響いた言葉は、安心させてくれる。




私は、私のままで…



それは、許されるのだろうか。





   

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