傍に | ナノ

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「……ん?」

クシナ達から逃れるために家の屋根を飛び回っていたら、ふいに緑色の髪が視界に入ったような気がして、

走る足を止めると、数歩後ろに下がって、首を出す。

ああ、やっぱり。

それは彼女だった。例のあの子。

人気のない方向へずんずんと歩いていく姿を見つめていたら、

ふいに自分は屋根から降りて、その後を追っていた。

「おーい」

「?」

すぐに振り返った彼女はこちらに気づくと驚いたような顔をした。

「シカク」

小さく俺の名前を呟いた、俺は近寄ると頭を傾げながら口を開く

「あんまり外にはでなそうなのに」

そう言い放つと、なんだか考え込むような顔をした彼女に

やっぱり話しづらい、そう思う。

するとふいに声は出された。

「さ、んぽっ」

「は、散歩?」

予想外の答えに思わず目を丸くした。

散歩だと?嘘だろ。そんなことするような奴に見えない

そう思うのはやはりあの印象が心に残っていて、

外には滅多にでなそうなのと、ずっとぼーっとしているような雰囲気があったから。

「……。」

自分で言って恥ずかしくなったのか視線を逸らした彼女に笑いがこみ上げた。

「ぶ…ギャップっていうのかコレ」

「そこまででもないような気がするけど。そんなに暗い?」

「あ?そう思うけど」

自分は女に容赦ない言葉を向けるなあ、と思い、彼女の様子を伺うと

なんだか変な表情を浮かべていた。

「なに」

「あ……なんでもない」

「は、なんだよ。」

するとぼそっと吐かれた言葉に、また胸が揺らいだ。

その言葉は何日も自分の胸を揺らしていた言葉だった。

「だから、貴方の笑顔綺麗だな、って」

「意味が分からない」

普通綺麗なんか言われて嬉しくもなんともない。

「カッコイイなら言ってくれても構わないけど」

冗談まじりで言ったことだが、きっと彼女は笑わないな。

そう思ったが、目の前の彼女に息を飲んだ。

瞳は細められて、緑色の瞳の中はきらめいていた。

そして微笑むその表情に心臓が鼓動を刻み始める。



「……本当に変な奴だな」

変な奴の笑顔ってのはこんなにも胸にくるものがあるんだろうか。

 

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