16歳 | ナノ

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シュラの攻撃を軽々しく交わすNO NAMEは足を一歩前に進めた。

向かう先にいるのはエンジェルだった、交差し合う瞳、反らせないままエンジェルは身動きができずにいた。

「私を…貴方は殺せる?」

エンジェルのすぐ傍まで来たNO NAMEは薄い笑みを浮かべながら、見つめていた。

その瞳の中で燃える赤い輝きは常に光り続けている、エンジェルは小さく息を吐き出すと、

顔を歪めながら、瞳を細めた。


――殺せない


なぜ?なぜ?なぜ…

そんな疑問がエンジェルの中で渦巻く、目の前で笑うNO NAMEの笑顔が愛おしくてたまらない、と感じてしまう。


「悪魔め、私の心を呪ったな」

「…そうだよ、私の意思関係なく…男はみんな呪われる、いい気味だ」

また笑顔を浮かべるNO NAMEは、右手を振り上げると、その手に赤い炎を纏わせた。

「おい!!なにやってるんだ!」

シュラの声はエンジェルには届いていたが、エンジェルの足は動かなかった。

まるで茨の中に入ってしまったように、まるで出口の見つからない迷宮に迷い込んだように。

身体が動かない、この想いから脱出できない。


「…可哀想な悪魔だな、NO NAME」


シュラは剣を構えながら、笑う。NO NAMEは笑みを浮かべていた顔は燃え上がるように険しくなった。

そこから漏れ出すものは、殺気に似ない何か別の感覚。

赤いものが黒く変わっていくような、感覚。


「…誰も、私を本気で好きになってくれない、みんなこの呪いのせい」

天使の子であるNO NAMEは特殊な能力を持っていた。

罰とは違う、能力。彼女はそれを“呪い”だと思った。

男の心を捕らえる、奇妙な能力。それは本物の愛ではない、偽りの想い。

「だから、私は……サタンと」

「またサタンもお前の呪いにかかっているのではないのか」

「違う…この呪いをうけたものは発狂する」

いずれ、狂う。

だがサタンは狂ってはいない、彼自身は、ずっとNO NAMEを愛してきたのだ。

「…NO NAME、人間だった頃のお前には…たくさん愛してくれる奴がいただろ」

「……人間、私に…人間だった頃など、ない!!!」

じゃあ、この想いはなんだ。と自身に問いかける。

どうして燐のことで胸が苦しくなった、どうして、どうして。

「お前には…ちゃんと家族がいたんだよ」

シュラの言葉が一つ一つ重なって、罪下さる。

NO NAMEの瞳が細まった時、サタンの叫び声が聞こえた。

「!」

燐と戦っていたはずのサタンの身体がだんだんと元に戻っていく。

元の身体の主、雪男のものへと戻っていく。

「サタンッ!やめて…ッ、また私を一人にするの?!?!」

長い時がたった私に、何があったのか教えて欲しい。

この空いた時間をサタンの愛で埋めて欲しい。

NO NAMEがサタンに駆け寄った瞬間に、その背後に大きな穴が出来た。

「なんだと?!」

それは形を変えると、黒く変化する。

「これは…虚無界の門?!」







   

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