16歳 | ナノ
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「……、」
誰もいない部屋の片隅に、雪男は座っていた。
暗い部屋の中、カーテンから漏れる太陽の光にわずかに照らされる。
「(NO NAMEが……、)」
頭の中でいっぱいになる想いは全ての感情を含んでいた。
これまで大事に大事にしてきて、いつでも笑えるように傍にいたのに。
NO NAMEはずっと昔から悪魔であった。
自ら悪魔堕ちした、人間と天使のこと。許されるわけのない、存在するはずのない者。
「……NO NAME」
僕は裏切られたんだろうか、あの笑顔に、ずっと騙されていたんだろうか。
ぎゅっと拳を握りしめる、爪が肉に食い込んでゆっくりと血が床にこぼれ落ちた。
そして静かな空間の中に、悲惨な雪男の声が響きわたる。
「どうしてなんだ、なんで僕らは、一緒に育ってきたんだろう」
父、獅郎はどうして僕たちを、NO NAMEを、育ててきたんだ。
どうして――どうして、
疑問が頭の中で暴れ出して、止まらなくなる。
疼いていた黒い闇が大きく揺れるように、雪男の瞳も黒く染出す。
「それでも、それでも僕は…っ…」
――NO NAMEを殺すことなどできない
深く根付いた想いは簡単に消えない、もっと深くまで根を伸ばして、心臓を支配する。
鼓動と共に常に生き続ける感情は、時に自分をも変える。
「僕は…いつだってNO NAMEの見方だ、」
彼女は幸せならそれでいい
彼女が笑えればそれでいい
たとえ、誰を敵にしようとも。
「…僕が、守るんだ」
ずっと前から、決めていた想い。
ただ笑っていれば、ただ、僕の傍にいてくれれば。
彼女が僕に想いを寄せてくれるまで
「…僕は…決めたんだ………」
雪男の背後でその姿を嘲笑うように見つめる影は、全てを侵食するためにただ笑う
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