16歳 | ナノ

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「貴方はこのままでよかったのか、それとも元に戻ることが正しかったのか」

広いベットに横たわるNO NAMEの頬に手を伸ばして、そっと頬を撫でた。

赤く彩られた髪から見えたのは長く鋭い耳だった。

そこに顔を近づけると、唇がそっと触れる。

ただ漂う甘い香りに自分はもうとっくの昔から酔っていた。

食べたい、食べたい、食べたい。

この気持ちしかなかったのに、いつのまにかそれは変化したのだろう。

「…貴方にとって何が正しいのかは私には分からない。」

だからこの気持ちに嘘を付き続けて、

ここまで来た。

眠る貴方を抱いて逃げてしまいたい。

美しいその姿をずっと自分のものにしたい。

そんな欲望が溢れ出る。

でも所詮自分も同じなのだ、我弟と。

血が繋がっている、とはすごいことだ。

父親の代から同じ女を愛すことになるとは、思わなかった。

果たしてこれは“愛”なのか。

誰もがこの人を愛し、この人は愛される存在。

もう決められているのだ、それがこの人の天から授かりし罰なのだから。

「…ふ、」

口元はゆっくりと弧を描くと、頬をなでるその手を引っ込めた。


「兄上」

それとほぼ同時に部屋に入ってきたのは、アマイモン。

相変わらず無表情なアマイモンの表情だったが、NO NAMEを見て眉間にシワがよった。

「…NO NAMEは、元に戻ったのですか」

「あぁ、次に目覚めるときにはもう記憶を取り戻しているころだろう」

それにアマイモンの眉間のシワは取れなかった。

それを鼻で笑うように見つめると、口を開いた。

「どうした、このときを心待ちにしていたのではないのか?」

アマイモンは言った。

叶わぬ思いなら突き放された方がマシだ、と。

その通りだ、なのにアマイモンの表情は嬉しさを帯びてはいない。

「…僕は望んでいたんです、この時を」

小さく呟いたアマイモンだったが、その言葉の中に切なさが混じっているようだった。

それに腹から笑いがこみ上げてくる。

あぁ、本当に面白い。

彼女に関わる全ては面白いものばかりだ、そして自ら消えることを選ぶ。

そして彼女を苦しめるのだ、永遠に。



それは、私も同じ。








   

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