16歳 | ナノ

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急ぎ足で理事長室へと足を進める、

思い浮かぶのは大切な妹、

「兄さん、落ち着いて」

「落ち着いてられっか!」

隣で同じように歩く雪男は息を吐いた。

勢いよく理事長室の扉を開くと、

いつものように不可解な笑顔を浮かべた理事が俺たちを見た。

「NO NAMEは、」

「あちらで休んでいますよ」

メフィストが指さした部屋に向かって歩いてドアを開けようとしたが、伸びた手がドアノブ前で止まる、

過ぎったNO NAMEの顔と、あの言葉。

“大嫌い”

その言葉が耳から身体に入ってきた瞬間、

心臓が止まったかのように全身の熱が引いた、

あいつは俺の事、嫌い、なんだよな。

塾の合宿の夜、

屍が現れて、俺たち塾生を襲った。

一匹だけじゃなかったら、

きっと俺たちと一緒じゃないNO NAMEが危険だと思い、

囮になりNO NAMEを探すことにした、

が、屍を倒したあともNO NAMEを見つけられなかった、

雪男に聞けば結界の中に避難させていたと言うが、

その部屋を見てもNO NAMEはいない。

いない、と分かったとき、同じように体の熱がひいたが、

“大嫌い”より“いなくなる”のほうが、

胸が苦しかった、

何も考えられなくなった。

だが雪男のもとに入った電話、

メフィストからの一言、

“NO NAMEを保護しました”

「…くそ、」

ドアノブに手をかけて、ドアを開くと

真っ白な部屋が広がった。

そこにあるベットにNO NAMEは横たわっていた。

「NO NAMEッ」

駆け寄ると、整った呼吸でスヤスヤと眠っているNO NAMEを見て、

いっきに肩の力が抜けた。

「…なんだよ、」

怪我してなくて良かった、

いつもと変わらないNO NAMEの表情を眺めて、柔らかい髪に触れる。

無事で良かった、

安心感が俺の身体を埋め尽くしている、

「…!」


NO NAMEの瞳がぱっと開くと、

視界に俺を写した。


「…り、ん」

そのぎこちなさそうな声に、あの言葉を思い出した。

「……何が、あったんだよ」

「…え」

「お前、合宿で停電したとき、部屋の前で倒れてたんだったな」

「倒れてた…?」

「メフィストの使い魔が保護してくれたそうだけど、」

「使い魔?」

少し考え込むように瞳を閉じたNO NAMEは口を開いた。

「そっか…、ごめん」

だた悲しそうに謝るだけのNO NAMEに、

言葉にできない気持ちが溢れてくる、

なんで、あやまんだよ…。

「覚えてねェのかよ?」

「…う、ん」

「……ったく」

ここで怒りをこいつにぶつけても、

NO NAMEを悲しませるだけだし、

……やめた。

「…燐、ごめんね」

「なんども謝んな」

「違う、大嫌いって言って…ごめん」

心の片隅にずっと引っ掛かっていた言葉、

モヤモヤする気持ち。

「別に、気にしてねェよ」

そう言ってNO NAMEにいつものような笑顔を向けるとNO NAMEは笑った。

俺はこの笑顔を守りたいんだ、

傷つけることなんて、許させェ…。




   

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