16歳 | ナノ

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あの青い炎を見ると身体の血が逆流するように騒ぎ出す。

同時に胸の奥からからないはずのものが浮かび上がってくるような感覚に襲われるのだ。


――あるよ。


頭の中で響いた言葉に思わず顔歪ませた、

そして部屋のドアが開いた。それに瞳を瞬きさせる。

普通ならこんなに驚くことなどないのだが、

今はもう人が訪問するにはありえない時間帯だからだ。

だが半端誰がくるのか分かっていたような胸はすぐに落ち着いた。

予想通り、そこには緑色の髪のあの悪魔、アマイモンの姿があった。


ゆっくりと近づいてきたアマイモンを見つめると、彼も変わらない無表情を返した。

そしてまだ残る唇の感覚に戸惑いながらも、その唇を動かした。

「……不完全とか、完全とか、全然分からない」

アマイモンの言う言葉が理解できない。

いくら考えたって言葉は見つからない。

それにすぐ近くまできたアマイモンの顔が歪んだ。

今まで無表情しか見せたことのないような顔が、ひどく切な気に、苦しそうに。

そしてその瞬間、起き上がっていた身体はアマイモンの手によってベットに押し倒された。

少し痛みを感じた背中に瞳を細めると、倒れた私の頭の両側に両手をついて、

覆いかぶさるようなアマイモンを見つめた。

どうしてこうなったのか分からない、前のアマイモンも変だったけど。

全然何を考えているのか分からない。


「早く戻ってくれないと」

「何に、私は私でしょう…?!」

「違う、本物の貴方は貴方じゃない」

「意味が、分からない……」

私は私ではないというの…?

私は偽りだというの…?

そんなこと認められない、そしたら今までのこと全部が嘘みたいに消えていって

しまう気がするから。認めた瞬間に大切なものが全部消えていってしまう。

恐怖に震える胸は少しずつ鼓動を刻んでいく。

「じゃないと…僕の心は、抑えきれなくなってしまう」

かすれた声が放たれた、その声にひどく胸が傷んだ。

歪むアマイモンの顔を直視できない、

「なんで…私に、何を求めてるの…」

私は私なのに。

私に何をしてほしいの?その先に何があるの?

混乱し始めた頭は電流が走るように痛み出す。

瞳を細めたアマイモンは口を開いた。




「僕は、僕は貴方に愛されたいんです」


その言葉に瞳を見開いた。すんなり耳に入ってきた言葉が理解できない。

「なに、それ…」

悪魔であるアマイモンが、私を好きだというのか。

私に、愛されたいというのか。

ふいに頬に伸ばされたアマイモンの手は冷たかった、ゆっくりと頬を撫でられると

その親指は唇に触れた。

「僕は貴方の全てがほしい、殺してしまいたいほどに」

それにびくん、と胸が跳ねた。あまりにも熱を含んだ瞳で放たれた言葉だったから。

「でも貴方には僕の声なんか届かない、」

「……アマイモン、」

何を言っているのか分からない、なんでそんなに苦しそうなのか分からない。

収まらない気持ちがふわふわ宙に浮いていて、どうすればいいのか思いつかない。

そしてもう一度アマイモンの瞳は細まると、

唇に柔らかいものが触れた。

それは熱を帯びたもの。それがなんなのかすぐに分かった。



   

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