16歳 | ナノ

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手を伸ばす先には大切で仕方がない妹の姿。

生きていることを忘れたような顔色のNO NAMEの口元はうっすらと開かれている。

その上から今にも消えそうな呼吸を手助けする酸素マスクがつけられていて、

それが視界に入るたびに胸をひどく締め付ける縄が更に強くなる。

冷たい頬を撫でれば、頬と同じに冷たいであろう手をゆっくりと握った。

「気、失ってただけじゃねーのかよ……、」

あの任務の日。アマイモンと戦闘中にNO NAMEは気を失った。

俺はシュラに連れて行かれたが、NO NAMEは雪男が連れ帰った、

だが一向に目を覚まさないNO NAMEをメフィストが学内の特別医療室に運ばせた。

だが原因は不明、最新の機能も整っている医療室と言っていたが、

どうやら悪魔の影響かもしれないという考えを雪男は言った。

特別な力のせいか悪魔の影響を受けることが多かったNO NAMEだったが、

こんな状態に陥るのは初めてだった。時間がたつにつれてどんどん青白くなるNO NAMEの顔を

見てはいられなかったが、離れることなどできなかった。

NO NAMEが生きていることを証明する奇怪な音は正常に聞こえてくるが、

いつ途絶えるか分からないその音に恐怖さえ感じられた。

どうして、どうして。

何度そう思ったことだろうか。何度質問を問いかけただろうか。

なぜ俺の大事な者にこんな運命が待っているのか。

なぜ“悪魔”を認識するこの世界に足を踏み入れなければならないのか。

考えずにいられなくなる思考はだんだんと重みを増していく。

授業の内容も頭に入らない毎日だったが、もう友人達の声も遠ざかっていく。


「親父、どうすればいい…?」


俺は守ると誓ったのに、

NO NAMEを、こいつの笑顔を守ると、誓ったはずなのに。

今こいつは笑ってないじゃないか、

今にも死んでしまいそうじゃないか。

親父、あんたならどうする、ずっとNO NAMEの力と戦ってきた親父はどうする。

俺は何も考えられないんだ、もう思考が働かないんだ。

いくら考えても、この全部雪のように真っ白になって、溶けていく。



「親父…っ…俺は、こいつが大切なんだよ…っ…」



世界でたった一人の俺の妹、失うことなど考えたくない。


   

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