16歳 | ナノ

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曇天の空から落ちる冷たい雨、誰かが泣いているような、冷たい雨

灰色の父の墓の隣に建てられた新しい、墓。

置かれた花たちが濡れている、落ちてくる雨によって濡れていた。

その前に立ち続けている一人の青年の髪も同じように、濡れていた。

だがその場からは決して離れない、瞳はけして、閉じない。

「NO NAME」

呟かれた名前、切なさと、愛しさとが交じり合った、名前。

自分の愛しい、愛しい妹の名前。

もういない、大切な人。

やりきれない気持ちと、泣きたい気持ちが交差して、自分も消えてしまいたいと思った

頬に伝わる雫が、ゆっくりと地面に落ちる。

「お前は、笑ってるか…?」

お前を失ったあの日から、決意したことがある

お前が残したこの力で、たくさんの人を幸せにすること

たくさんの人を笑顔にすること

「お前が大好きな人間を、幸せにする」

きっと、これから俺は…たくさんの人と出会う

でもわかってしまったんだ。お前以上に大切に想える人など

もういない、絶対に…いないんだ

「お前を好きなのは…嘘でも、偽りでもない……」

燐の右手を覆ったのは青い炎だった、そして左手を覆ったのは、赤い炎

優しい炎と憎き炎

この力で俺は、これからたくさんの人を救う

それなら、お前は喜んでくれるだろう?

俺が知らない場所で、笑っていてくれるだろう?



また、雫が地面へと落ちた。




ああ、どうしようもなく切なくて、胸が苦しい

声が枯れるまで叫んでも、きっとこの気持ちは晴れないだろう

毎日、毎日泣きたくなる、それでも俺はこの赤い炎を絶やさないだろう






だって俺は、どれほどの時がたとうと俺は





に、を――









今日もまた、二つの炎が世界を照らす






END.


 

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