16歳 | ナノ
17022/6
優しい、暖かい青い炎
うっすらと見える、あの時の、サタンの姿
私を囲む彼岸花達
初めて出会ったときと同じ姿をしたサタン
私を、見下ろしている、優しい瞳で
「あちらの世界に存在している肉体を壊したか、お前はもう…戻れない」
そう、自分の手で、心臓を握りつぶした。
「バカだな、お前は」
白いサタンの手が伸びて、優しく身体を包む。暖かい、青い炎も共にNO NAMEを包んだ。
「あのね、サタン…貴方が私を人間にしてくれたんでしょう?」
分かっていた、サタンは、すごく優しい人だから
彼は、知っていたのだ、自分が本当は人間になりたがっていると、忌み嫌う人間に、本当はなりたかったのだと
「…願いが叶うまで、随分と時間がかかった」
「うん…」
「お前の罪と罰全てを俺が貰い受けて、お前をただの人間にしてやりたかったが、お前にはこびりついた“呪い”と悪魔に好かれる肉体は消えなかった」
「いいの、いいの…私は幸せだった」
サタンは黙って頷くと、NO NAMEを強く抱きしめた。
「今度こそ長い時を共に、過ごそう」
「ううん、もう十分生きたよ」
果てしなく長い時は私には与えられ、それは神から下った罰であった
でもそれは幸せな時に変わってしまった
「私はもう生きることは許されない」
「神など、俺が滅ぼしてやろうか」
「ダメだよ、そしたら人間が消えてしまう」
それは自分にとって最大のの苦痛、
「でないとお前は、死を受け入れるんだろ」
「うん、」
もうよく見えないサタンの顔、もうよく聞こえない優しい声
「ありがとう……出会えて、良かった」
サタンの腕の中で消えてしまったNO NAMEの面影をさがすように、サタンは自分の胸に閉じ込めた。
涙は出ない、すっかり乾ききってしまった心だけがそこにある。
でも思い出は残っている。
「……お前の罪も罰も呪いも全て、俺が、消し去ってしまえたなら」
サタンは近くの彼岸花をとると、それは青い炎に纏われ、黒くなっていく
そしたら、この願いは叶うかもしれない
悪魔の王であるサタンの、もっとも悪魔らしくない願いが、叶ったかもしれない
もう、遅いけれど
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