16歳 | ナノ

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優しい、暖かい青い炎

うっすらと見える、あの時の、サタンの姿

私を囲む彼岸花達

初めて出会ったときと同じ姿をしたサタン

私を、見下ろしている、優しい瞳で



「あちらの世界に存在している肉体を壊したか、お前はもう…戻れない」


そう、自分の手で、心臓を握りつぶした。


「バカだな、お前は」

白いサタンの手が伸びて、優しく身体を包む。暖かい、青い炎も共にNO NAMEを包んだ。

「あのね、サタン…貴方が私を人間にしてくれたんでしょう?」

分かっていた、サタンは、すごく優しい人だから

彼は、知っていたのだ、自分が本当は人間になりたがっていると、忌み嫌う人間に、本当はなりたかったのだと

「…願いが叶うまで、随分と時間がかかった」

「うん…」

「お前の罪と罰全てを俺が貰い受けて、お前をただの人間にしてやりたかったが、お前にはこびりついた“呪い”と悪魔に好かれる肉体は消えなかった」

「いいの、いいの…私は幸せだった」

サタンは黙って頷くと、NO NAMEを強く抱きしめた。

「今度こそ長い時を共に、過ごそう」

「ううん、もう十分生きたよ」

果てしなく長い時は私には与えられ、それは神から下った罰であった

でもそれは幸せな時に変わってしまった

「私はもう生きることは許されない」

「神など、俺が滅ぼしてやろうか」

「ダメだよ、そしたら人間が消えてしまう」

それは自分にとって最大のの苦痛、

「でないとお前は、死を受け入れるんだろ」

「うん、」

もうよく見えないサタンの顔、もうよく聞こえない優しい声

「ありがとう……出会えて、良かった」

サタンの腕の中で消えてしまったNO NAMEの面影をさがすように、サタンは自分の胸に閉じ込めた。

涙は出ない、すっかり乾ききってしまった心だけがそこにある。

でも思い出は残っている。

「……お前の罪も罰も呪いも全て、俺が、消し去ってしまえたなら」

サタンは近くの彼岸花をとると、それは青い炎に纏われ、黒くなっていく

そしたら、この願いは叶うかもしれない

悪魔の王であるサタンの、もっとも悪魔らしくない願いが、叶ったかもしれない








もう、遅いけれど














 

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