16歳 | ナノ

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暗い、真っ暗な世界。

目の前に立つのは、自分によく似た、でも人間の少女の姿。

赤い瞳も、赤い髪ももたない、私が人間であったならそんな姿になるであろう、

そんな少女が私を見ている。とても悲しそうな瞳で、ずっと見ている。

『返して』

少女の声は自分によく似ていた、そんな声は切な気に頭に響きわたる。

「何を、返して欲しいの」

『…大切な、思い出』

「奪ってなんか、ないわ」

『…あるよ、確かに…ここに』

少女が指さしたのは、私の胸だった。“心の中に”そう言っているように見えた

そして少女の頬を濡らしたは一滴の涙、それはだんだんと下に降りて、黒い世界に落ちていく。

「…なぜ、貴方の思い出がここにあるの」

『だって、私は貴方でしょう――?』

それは稲妻に似た衝撃、心臓も胸も、全身を震わせる。

「私は、悪魔だ」

少女のような、人間ではない。だからこそ、ずっと一人で、孤独だった。

『…私は、確かに人間だっよ』

「…違う、違う……私は一人で、この世界で生きていた」

『自分の罪を何度も胸に押し込んで、自分の記憶を殺して生きていた貴方が?』

本当のことだった、生まれた時から、罰を与えられ、孤独だった私は

その罪を忘れようとした。自分がただの人間だと思い込んで、暮らしていた。

でも能力のせいで何度も死にかけた、死ねなかったけれど、その旅に何度も記憶を封印して生きてきた。

悲しい、過去。

『貴方は人間になりたかったんだよ』

「そうかもしれない、でもなれなかったんだよ…?でもサタンが一緒にいてくれたから私は…一人ではなくなったの!」

『…私にも、家族がいたんだよ』

「…貴方は私なんでしょう…?なら家族なんていない」

『確かにいた、燐が雪男が、父さんが……』

溢れる涙を堪えようとはしない少女を見つめた、その涙は赤く塗りつぶされた思い出を蘇らせる。

押し込めたはずの、思い出。
















「おいNO NAME!雪男!早く!」

「待ってよっ!」

前を走る燐と雪男の後ろ姿、まだ幼いあの日の思い出

必死に追いかけようとして、地面に躓いて、そのまま転んでしまった私。

もう姿の見えない二人、涙が溢れそうになった。

「燐、雪男っ…」

大泣きした私の手を掴んだのは消えてしまった燐で、もう一つの手を掴んだのは燐を追いかけていってしまったはずの雪男だった。

二人は笑いながら、私に“笑え”と言った。

ずっと、笑え、と言い続けた。


忘れない、忘れたくない。


あの二人の手のぬくもりを、


「おかえり!三人共、またNO NAMEは怪我してきたな!」

そう言いながら笑顔で抱きしめてくれる父さん




なんで、忘れていたんだろう



















『人間だったんだよ』

「うん、私は…人間でいられる時があった…貴方は、私だ」

目の前の少女を抱きしめると、同じぬくもりを感じた。

強く優しく暖かく育ててくれたあの三人のぬくもりが、ここにある。







だからこそ、


私は、償わなければならない


この、罪に





   

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