16歳 | ナノ

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「これに飛び込め、虚無界で……俺と…共に」

聞こえなくなったサタンの声、もうこの身体にサタンはいなかった。

彼の存在する世界は、この奇異な扉の向こう。

NO NAMEは息を飲み込むと、一歩その扉へ踏み出す、だがそれを止める者がいた。

NO NAMEの腕を掴んだ、その手の先には燐の姿があった。

「行くな」

「…は、なせえっ!!!」

NO NAMEは身体中に赤い炎を纏わせた、燐にはきっと毒となる炎。

だが一向に手を離そうとはしない燐にNO NAMEの瞳は見開いた。

「お前の炎で、俺が傷つけるわけがないだろ?!」

「!」

確かに燐は傷ついているようには見えなかった、黒くなる気配もない。

ただNO NAMEを見つめて、切ない表情をする。

また胸が傷んだ、どうしてこんなに痛いのか分からない。


「どうして、私は……悪魔なのに、どうしてそこまで」

NO NAMEは炎を纏うことをやめた、変わりに顔を歪めて、燐を見つめる。

答えは最初から分かっていたかのように、燐は口を開く。

「言っただろ…お前は、俺の妹だ」

心臓が揺らいだ気がした、跳ねるたびに傷んだ胸から溢れ出るのは、赤く塗りつぶされた思い出。

「いや…僕たちの、妹だ」

もう一つの手をつかんだのは、雪男だった。

ボロボロになった手で、NO NAMEの腕を掴む。強く、それでもとてつもなく優しく。






 

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