16歳 | ナノ
16022/3
「これに飛び込め、虚無界で……俺と…共に」
聞こえなくなったサタンの声、もうこの身体にサタンはいなかった。
彼の存在する世界は、この奇異な扉の向こう。
NO NAMEは息を飲み込むと、一歩その扉へ踏み出す、だがそれを止める者がいた。
NO NAMEの腕を掴んだ、その手の先には燐の姿があった。
「行くな」
「…は、なせえっ!!!」
NO NAMEは身体中に赤い炎を纏わせた、燐にはきっと毒となる炎。
だが一向に手を離そうとはしない燐にNO NAMEの瞳は見開いた。
「お前の炎で、俺が傷つけるわけがないだろ?!」
「!」
確かに燐は傷ついているようには見えなかった、黒くなる気配もない。
ただNO NAMEを見つめて、切ない表情をする。
また胸が傷んだ、どうしてこんなに痛いのか分からない。
「どうして、私は……悪魔なのに、どうしてそこまで」
NO NAMEは炎を纏うことをやめた、変わりに顔を歪めて、燐を見つめる。
答えは最初から分かっていたかのように、燐は口を開く。
「言っただろ…お前は、俺の妹だ」
心臓が揺らいだ気がした、跳ねるたびに傷んだ胸から溢れ出るのは、赤く塗りつぶされた思い出。
「いや…僕たちの、妹だ」
もう一つの手をつかんだのは、雪男だった。
ボロボロになった手で、NO NAMEの腕を掴む。強く、それでもとてつもなく優しく。
← →
[しおりを挟む]