16歳 | ナノ

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「!」

学園の塔の上にいたNO NAMEの目線は下がると、一人の青年へと向いた。

地上を歩く青い炎の持ち主。それにゆっくりと微笑むと、青年の前へと降り立った。

「…NO NAME?!」

唖然したような驚いたような声を上げたが、すぐに瞳は細まった。

「燐、だっけ」

「俺のこと、忘れたのかよ」

小さく歪んだ表情にNO NAMEは眉を寄せる、

「私は貴方のこと、知らない。」

ゆっくりそう言ったNO NAMEだったが、燐の表情がまた変わった。

その顔をみた瞬間、胸がえぐり取らせそうな感覚になる。

胸の中で足りないものを補おうとするように、何かが足りないと教えるように

何かが心を締め付ける。

「お前は、俺の…妹だ!!」

「……知らないよ、そんなの」

苛立つ気持ちが、だんだんと込上がってくる。

サタンと同じ青い炎を持つ悪魔だというのに、なぜ嘘をつく。


「私に兄などいた覚えはない、ずっと一人だった、私は、ずっと…」


ただ同じ時を繰り返すこの暗い世界を、一人で生きぬてきた。


「違う!俺がずっと傍にいただろ!雪男も、父さんも!!!!!」

「…雪男、父さん…?」

違う、違う、そんなもの私には無かった。家族のぬくもりも、

生まれた瞬間から存在などしなかった。

私に与えられたものは、罰のみ。











――お前は生まれてはならなかったもの

どうして、そんなことをいうの

――お前の母と父はお前という罪を作り出したからだ、よってお前は存在してはならぬ者

そんなの、知らない…この世界に生まれたかったわけでもない

――そうか、ならお前にふさわしい罰を与えよう

罰…?

――お前にとって悲惨なこの世界から死ぬことを許されない身体に、人間を愛せない身体に、悪魔に好かれる身体に

人間…、悪魔…

――お前はつぐないようのない罰を背負っているのだ、幸せなど感じない人生を生きろ

そんなのは、死んでいることと同じじゃない…







神が、私に初めて問いかけたのは私が生まれた直後だった。

母と父は神の怒りをかい、存在しない者に。

私はそれ以上の罰を。

初めから罪しか与えられなかった身体に、家族など存在しなかったのだ。



「お前には、俺たちがいただろ!?笑っていてくれてただろ?!」

「嘘をつくな!!!!」

その瞬間、燐とNO NAMEが赤い炎で囲まれた、またNO NAMEの手に灯る赤い炎に燐は目を見開いた。

「私と、一緒にいてくれたのは…サタンだけだった」

「…な、んだと」

全てはサタンのために、そう思っていたから、私は悪魔に堕ちた。

罪深い存在が更に罪深くなった。罪は消えない、新たな罪を背負うだけ。

なら、何も問題ない。罪は消えないのだから、ならこの長い時を彼と生きようと思った。

「…貴方を知らない、はずなのに、なぜこんなにも苦しい…?!」

こぼれ落ちる涙は大地に降り立った、

まるでその涙のせいで火が消えたかのように、ゆっくりと消えていく炎。

唇を噛み締めるNO NAMEに燐はゆっくりと近づいた。




 

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