16歳 | ナノ
09044/4
「気持ち悪いでしょう…?全身の感覚が、でも大丈夫。もうすぐですから」
「…な、なんのことですかっ…?」
とぎれとぎれの言葉を必死に放つ、身体の痛みに耐えながらメフィストさんを見上げた。
「ほら、もう瞳は真紅に染まっている」
「…!」
その言葉に身を震わせた、
なんのことだか分からない、その瞬間に感じた鋭い痛みと共に意識を手放した。
暗い世界の中に、一人で立っている。
そして目の前に現れたのは、赤い瞳の赤い髪の私によく似た人。
耳は鋭く伸びていて、
まるで、
――“悪魔”みたい
発せられたその声にびくついた。
すると小さく笑ったその人の目の下には赤く彩られた紋章が浮かび上がった。
私に似ているが、大人びたその顔をただ見つめることしかできなかった。
「…貴方は、だれ」
もう分かっていたのかもしれない。
でも認めることなどできない。
だから否定してほしかったのだ、
私が私である証拠がほしかったのだ。
私が、偽りではない証拠が、記憶が、大切な人たちが消えないように。
でも待っていた答えは、
心臓も胸も、全身を狂わせた。
――私は、貴方でしょう?
真実は、私を赤く染める。
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